【北奥羽のクマ事情】(6)目撃多数、事故に注意を

広大な大豆畑を動き回るニホンツキノワグマ=2020年8月、秋田県鹿角市熊取平
広大な大豆畑を動き回るニホンツキノワグマ=2020年8月、秋田県鹿角市熊取平
青森、秋田両県の山間は、雪解けが進み春になると、山菜の季節を迎えます。十和田湖の南のこの場所でもこれを待ち構えている人々が多いですが、クマもまた待ちかねています。この時期になれば毎年、山菜取りがクマに引っ掛かれたとか、襲われたなどの事故も現.....
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 青森、秋田両県の山間は、雪解けが進み春になると、山菜の季節を迎えます。十和田湖の南のこの場所でもこれを待ち構えている人々が多いですが、クマもまた待ちかねています。この時期になれば毎年、山菜取りがクマに引っ掛かれたとか、襲われたなどの事故も現実に起こります。[br][br] 2016年、最も典型的な事故がこの一帯で起こりました。十和利山のふもと、迷ケ平に続く秋田県鹿角市十和田大湯の田代平から熊取平が現場です。同年5、6月に4人が次々とクマに襲われて犠牲になる、本州では最大規模の悲惨なものでした。[br][br] 第2回で登場した米田一彦さんが、この事故の詳細な記録を『人狩り熊』(つり人社刊)という一冊の本にまとめています。[br][br] 田代平と熊取平は、かつて春にネマガリダケを獲る人々でにぎわった場所です。熊取平は国策で開発された牧地でした。現在は数件の酪農家と養豚場があり、広大な平地が続きます。その間を熊取沢、田代沢などの沢が流れています。[br][br] 地名が熊取平ですから、クマがいて当たり前。しかし、これは自然が残っていることと、もう一つ別の要因が大きいのです。[br][br] 実は、この場所では大規模な農業が行われています。国策で開拓された広大な牧地、その後厳しい気象条件に牧地が使われなくなっているところに大根、ソバ、大豆などが植えられています。[br][br] これは青森県内の農業会社が作付けしているものです。この会社の経営者はクマの存在も熟知していて、クマが大豆を食べる(実だけでなく若葉も食べる)ことを気にしていません。この一帯のクマが、ささやぶや沢に潜むより、むしろ畑に出て顕在化した方が安全だと思っているそうです。[br][br] その時期が7~9月でした。さらに、農地に隣接して岩手県の業者による栗材生産という休耕地の利活用が行われています。これらの特殊な事情が絡み、クマが多く目撃されています。広大な大豆畑を動き回るニホンツキノワグマ=2020年8月、秋田県鹿角市熊取平