【震災10年 復興の歩み】(7)久慈市 市や県のハード事業完了

国直轄事業として整備が進む久慈港湾口防波堤=2020年11月(釜石港湾事務所提供)
国直轄事業として整備が進む久慈港湾口防波堤=2020年11月(釜石港湾事務所提供)
2・78平方キロメートルが浸水した久慈市では、各漁港の復旧を皮切りに住宅再建や防潮堤のかさ上げが進み、2019年には総合防災公園が完成した。今年9月完成予定の湊橋架け替え工事を除いて市や岩手県のハード事業は3月末までに完了し、国直轄事業の久.....
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 2・78平方キロメートルが浸水した久慈市では、各漁港の復旧を皮切りに住宅再建や防潮堤のかさ上げが進み、2019年には総合防災公園が完成した。今年9月完成予定の湊橋架け替え工事を除いて市や岩手県のハード事業は3月末までに完了し、国直轄事業の久慈港湾口防波堤は28年度完成を目指して建設が進む。[br][br] 新たな防災拠点となる同公園は、市が国の社会資本整備総合交付金を活用して整備した。事業費は32億4千万円。21・7ヘクタールの広大な敷地に多目的広場4カ所、津波の際に海岸部からの迂回(うかい)路となる市道を備える。[br][br] 災害時に近隣住民の避難場所となるほか、救援物資の荷さばき所や自衛隊の宿営地として後方支援拠点となる。既に避難訓練などで活用しており、19年10月の台風19号では災害ごみ置き場としても活用した。[br][br] 海岸防潮堤は久慈や久慈湊、小袖、久喜の各漁港でかさ上げが完了。消防団員の安全のため、水門や陸閘(りっこう)を遠隔で自動閉鎖するシステムも導入された。河川堤防のかさ上げも進み、夏井川は19年度に完了、久慈川は今年3月中に計画高を確保できる見通しだ。[br][br] 一方、同市の防災対策は湾口防波堤による津波防御を前提としており、早期整備が望まれる。湾口防波堤は全長3・8キロで、16年に南堤(1・1キロ)が完成。北堤(2・7キロ)でもケーソン据え付けが進み、全体の進捗率は72%に達した。総事業費は1200億円に上り、完成すれば湾口防波堤としては国内一の長さになる見込みだ。[br][br] 同市では、海沿いの観光施設も壊滅的な被害を受けたが、小袖海女センターは15年、久慈地下水族科学館もぐらんぴあは16年にそれぞれ復旧を果たした。[br][br] もぐらんぴあは津波にのみ込まれ、200種・計3千匹の魚たちがほぼ死滅。久慈駅前で「まちなか水族館」として仮営業を続け、全国から多くの支援も受けて再開にこぎ着けた。[br][br] 宇部修館長(64)は「被災直後はあまりの被害に不安しかなく、再開できるとは思わなかった。さまざまな応援が本当にありがたかった」と振り返る。[br][br] ただ、この1年は新型コロナウイルスの影響で来館者が半減し、再開後で最も厳しい状況に置かれている。「見せ方を工夫しながら、積極的に話題提供していきたい」と、特徴を打ち出した展示に知恵を絞る。国直轄事業として整備が進む久慈港湾口防波堤=2020年11月(釜石港湾事務所提供)