天鐘(2月24日)

人生初のアルバイトは小学生の頃。コルク栓に似た小さな駒を金づちで木の穴に打ち込む。シイタケの植菌である。最初は難儀したが、次第に「コン、コン」とリズムが軽やかに。手にしたお駄賃が重かった▼冷害に強く、豊かな森林資源も生かせる。岩手県は生産量.....
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 人生初のアルバイトは小学生の頃。コルク栓に似た小さな駒を金づちで木の穴に打ち込む。シイタケの植菌である。最初は難儀したが、次第に「コン、コン」とリズムが軽やかに。手にしたお駄賃が重かった▼冷害に強く、豊かな森林資源も生かせる。岩手県は生産量が全国上位の「シイタケ王国」だ。特に自然栽培の原木シイタケは肉厚で香りが豊か。多くの人手が要るため、時機が来れば親族を挙げて作業に当たる▼中でも洋野町は高品質の乾シイタケで知られる。そんな県内屈指の産地から“宇宙飛行士”の誕生である。大役に任命されたのはシイタケの種駒。国際宇宙ステーションに向けて、5月にアメリカから飛び立つ▼「東北復興宇宙ミッション」の一環。東日本大震災から10年の3・11には、野口聡一さんが宇宙から全世界へ感謝の気持ちを伝える。さらに被災自治体が持ち寄った花や農作物の種を打ち上げ、情報を発信する▼種駒は1カ月半ほど滞在し、7月に帰還する予定だという。宇宙空間を旅した菌は変化する? シイタケの風味が増す? 「宇宙シイタケ」が店頭に並ぶ日も近い? 無責任な妄想に、期待を重ねたくなる▼逸品を多くの人に味わってもらいたい。生産者の思いを知ってもらいたい。震災を経験し、人口減少が進む現状で、宇宙を巡った「希望の種」が前を向く人々の一助になれば。ミッションの成功を祈る。