東日本大震災から10年の節目を前に福島、宮城両県を最大震度6強の地震が襲った。東北から関東までの広い範囲でかなりの揺れを観測、多くの人が「あの時」の恐怖を思い出した。[br][br] 大震災を起こした東北地方太平洋沖地震の余震とみられ、今後10年は余震への注意が必要だという。今回の大きな余震を機会に、地域や家庭などで地震への備えを再点検し、不十分なところは徹底しておきたい。[br][br] 政府の地震調査委員会の平田直委員長は今回の地震の前から大余震への警戒を呼び掛けていた。10年前の地震は2016年の熊本地震と比べて地震エネルギーは約千倍。1900年以降世界で4番目の規模で、超が付く巨大地震だった。このため長い期間にわたって大小の余震が続く。今回の震源は深かったために幸い大きな津波はなかった。しかし、今後浅い震源で大きな余震が起きると大津波が押し寄せる恐れがあるという。[br][br] 心配なのはこの大余震だけではない。南海トラフ巨大地震や首都直下地震は甚大な被害は不可避とされる。北海道東部沖の千島海溝沿いで起きる可能性があるマグニチュード(M)9級の巨大地震について地震調査委員会は「切迫している可能性が高い」と想定する。[br][br] 海溝型だけではなく活断層型も警戒する必要がある。日本には約2千の活断層があり、震源が浅ければ大地震になる。そうした地震が起きる度に多くの被災者が「近くで大地震が起きるとは思わなかった」と話す。[br][br] 最近、巨大地震による甚大被害を減らす「事前防災」の重要性が叫ばれている。南海トラフ巨大地震での推定犠牲者は約32万人。建物耐震化や屋内の安全対策、精緻な避難計画などを実行することでその数を約6万人に減らせるという。[br][br] 備えといってもさまざまだ。全国の自治体は現在コロナ禍対応で大変だろう。それでも建物倒壊の危険度を示す地震ハザードマップの点検や「3密」を避ける避難所、特設テントの確保などを急いでほしい。[br][br] 今回広範囲の停電が起きた。長期間の全域停電回避のための措置だったが、電力や交通などインフラ機能を担う企業には緻密な事前準備が求められる。[br][br] 言うまでもなく私たちの身の回りの対策も極めて大切だ。家具類の固定や非常食・非常用備品の確保、避難経路の再確認などたくさんある。「天災は忘れたころにやってくる」。この格言を忘れず、10年前の犠牲者に思いを寄せながら今こそ危機感を広く共有したい。