天鐘(2月23日)

今でもそうなのだろうか。昔取材した青森県庁では、書類の持ち運びに風呂敷を愛用する職員が多かった。議会の時などはそろって風呂敷包みを小脇に抱えて議場に向かった▼「軽くて、小さく畳めるから便利」と、ある人が言っていた。そんなことを思い出す今日2.....
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 今でもそうなのだろうか。昔取材した青森県庁では、書類の持ち運びに風呂敷を愛用する職員が多かった。議会の時などはそろって風呂敷包みを小脇に抱えて議場に向かった▼「軽くて、小さく畳めるから便利」と、ある人が言っていた。そんなことを思い出す今日23日は「風呂敷の日」。「2(つ)2(つ)3(み)」の語呂合わせから、風呂敷の関連団体が2000年に制定した▼記念日になったのは最近だが、その歴史は古い。奈良時代には使われており、室町時代に風呂場に敷いたことが名前の由来と聞く。商売や旅が盛んになる江戸時代に物を包む役割が定着。暮らしに欠かせぬ道具になった▼中身に合わせて変幻自在。大切な物を優しく守る。素朴な四角い布に宿るのは先人の知恵。包む、敷く、被る、掛ける―と、そのシンプルさ故、用途も広い。昭和の頃は男の子が背中でなびかせればヒーローになれた▼使い捨ての時代に存在感が薄れたが、レジ袋の有料化で、見直されているらしい。色やデザインも今は多種多様。おしゃれに、軽快に街を行く風呂敷に時々出会う。現代の伝統美が新鮮だ▼包む、そして結ぶ。「包」は母親の体内に宿る赤ちゃんの姿。「結ぶ」の「むす」には、新たな命や形が生まれる意味があるそうだ。慈しみの心や人への思いやりも、風呂敷はそっと包む。日本人が大切に使ってきた理由が分かる気がする。