時評(2月16日)

2020年の日本経済は、新型コロナウイルスの感染拡大で11年ぶりのマイナス成長となった。内閣府が発表した昨年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は前期比実質3%(年率換算12・7%)増と2四半期連続のプラスだ。だが、通期では4・8%減.....
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 2020年の日本経済は、新型コロナウイルスの感染拡大で11年ぶりのマイナス成長となった。内閣府が発表した昨年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は前期比実質3%(年率換算12・7%)増と2四半期連続のプラスだ。だが、通期では4・8%減とリーマン・ショック後の09年の5・7%減に次ぐ戦後2番目の落ち込みだ。[br] 1月に緊急事態宣言が再発令されたため1~3月期は低迷しても、ワクチン接種の本格化に伴い、4~6月期からは経済活動も回復軌道に乗ると政府は強気に見込む。株式相場も、世界的なコロナ支援策を好感して、バブル期以来30年半ぶりに3万円台に乗せた。[br] しかし反動で成長率はプラスに転じても、コロナ後の復活を楽観視するのは禁物だ。収束へ出口が見えても、対策費がかさみGDPの2倍以上に膨らんだ借金の処理など至難の出口対策が待ち受ける。失われた国富を取り戻すのは険しい道だ。[br] 昨年のGDPは、感染の波に連動した。影響が出始めた1~3月は年率2%台に減少、4~6月は緊急事態宣言が響き消費や輸出など総崩れで29・3%減と過去最悪を記録。宣言解除後の7~9月はその反動で22%超の急増となった。[br] 10~12月期もプラスを維持したのは、引き続き、企業活動や消費が活発だったことが要因だ。特に、内需の推進役を果たしたのは観光支援事業「Go To トラベル」だが、年末にかけて再び感染が拡大したことで同事業が縮小・中止になり、景気は勢いを失った。[br] 世界的にも米国のGDPは昨年3・5%減と、第2次世界大戦直後の1946年以来の落ち込み。都市封鎖が相次いだユーロ圏は6・8%減などと、感染の世界的まん延で軒並みマイナス成長を記録したのは当然だ。[br] 今後各国の重荷となるのは、家計や企業に投入した膨大な支援額の処理だ。国際通貨基金(IMF)によると、世界の財政支援は1年間に1445兆円で、公的債務総額は、世界のGDPに匹敵する額に積み上がった。日本は米国に次ぐ230兆円で、債務総額の対GDP比は258%と世界で突出する。[br] 企業の経営破綻が相次げば金融機関の不良債権が急増する。景気回復の中核を担う個人消費も、少子高齢化でけん引力が弱い。かと言って、現実離れした高い経済成長を目標に財政出動を続ければ、借金が膨らむだけだ。高いハードルが待つにせよ、政府は債務返済を含む復興の具体的道筋を示す必要がある。