天鐘(2月12日)

都を追われた源義経の一行は北へ。身を寄せた奥州の地で急襲に遭う。衣川の戦いは多勢に無勢。伝説の大男は主君を守るべく、全身に無数の矢を浴び、仁王立ちのまま絶命する。「弁慶の立ち往生」である▼たぎる批判に進退窮まった。東京五輪・パラリンピック組.....
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 都を追われた源義経の一行は北へ。身を寄せた奥州の地で急襲に遭う。衣川の戦いは多勢に無勢。伝説の大男は主君を守るべく、全身に無数の矢を浴び、仁王立ちのまま絶命する。「弁慶の立ち往生」である▼たぎる批判に進退窮まった。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は何を守ろうとした? 「必ずやる」と言い切った大会なのだろう。自らが最大の不安要素となる大失態。朧気(おぼろげ)な期待感すら萎(しぼ)む思いだ▼不見識極まりない発言だった。火消しのためと言わんばかりの謝罪と撤回。波紋は国内にとどまらず世界に広がった。ボランティア、聖火ランナー、スポンサーにそっぽを向かれた。辞任しか選択肢はなかった▼オリンピック精神を引き合いに出すまでもない。悪しき固定観念にとらわれず、分け隔てなく個人の尊厳を重んじ、一人一人が生き生きと輝けるのが男女共同参画社会。性の多様性もしかり。しかし現状は…▼政策の方向性を定める議員も、組織を目標へと導く管理職も、女性はまだまだ少ない。根強い偏見と不寛容さが見え隠れする。今回の騒動は旧態依然とした社会構造をあぶり出した。そんな気がしてならない▼森氏に向けられた怒りの矢は、日本が抱え続ける潜在意識をも貫く。傍観は容認である―。多くの人が声を張り上げた。健全な反応に安堵(あんど)する。であればこそ、世の中を変える反証が求められよう。