天鐘(2月10日)

街が燃えているのに、自分の家だけを守ろうと消火器を買い占めている―。コロナ・パンデミックの渦中に、ワクチン争奪に懸命な先進国の浅ましさを揶揄(やゆ)したWHO(世界保健機関)のテドロス事務局長の例えだ▼世界で購入されたワクチンは72億回分。.....
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 街が燃えているのに、自分の家だけを守ろうと消火器を買い占めている―。コロナ・パンデミックの渦中に、ワクチン争奪に懸命な先進国の浅ましさを揶揄(やゆ)したWHO(世界保健機関)のテドロス事務局長の例えだ▼世界で購入されたワクチンは72億回分。副反応などで使えない人達を除くと、世界人口77億人のほぼ誰もが接種できる勘定だ。しかし、先進国は“自国第一主義”に次々感染、われ先と買いだめに走っている▼カナダは人口の5倍、米国や英国は3倍、日本は2倍を契約。人口比16%の富める国が6割を買い占め、生活ばかりか生命まで担保できる…。一方、貧困国は国際支援団体の奔走も虚しく1割程度にとどまりそう▼「富が溢れればいずれは貧者も豊かに」と経済学者は説くが、いずれでは困る。別大陸発の変異株があっと言う間に世界を駆け巡る。既に世界の60カ国で接種が始まっており“ワクチン格差”は拡大の一途だ▼イスラエルは倍額でワクチンを購入、春に集団免疫獲得を目指す。EUは域内で生産されたワクチンの“輸出規制”で管理の目を光らせる。中ロは老獪(ろうかい)なワクチン外交で、領海の領有権をも取引しようとしている▼“自国主義”が過熱する中、周回遅れの日本にも来週、欧州発の第1便が到着する。粛々と接種し盛夏の五輪を迎えたい。それにしても国産ワクチンと保健政策の余りな脆弱ぶりが気に掛かる。