天鐘(2月9日)

お白州での裁きは、時代劇でおなじみの場面。多くの方はあの名奉行を連想されるだろう。大岡越前こと大岡忠相である。時は江戸中期。8代将軍・徳川吉宗の最側近として、「享保の改革」を推し進めた▼公正で人情味あふれる裁定の多くは後の創作。数々の功績に.....
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 お白州での裁きは、時代劇でおなじみの場面。多くの方はあの名奉行を連想されるだろう。大岡越前こと大岡忠相である。時は江戸中期。8代将軍・徳川吉宗の最側近として、「享保の改革」を推し進めた▼公正で人情味あふれる裁定の多くは後の創作。数々の功績に対する畏敬の念が投影されているとも。無料の医療施設「小石川養生所」は貧困に苦しむ人々を救った。火難を防ぐ町火消しも大いに歓迎された▼江戸は当時でも世界有数の大都市。木造家屋がひしめき合い、たびたび大火に見舞われた。大名火消しなども存在したとはいえ、やはり武家屋敷が優先。忠相は庶民の、庶民による、庶民のための火消しをつくる▼知らせを受け、勇ましく現場へ。貴重な水はほとんど使わず、とび口を手に猛火に飛び込み、建物を壊して延焼を食い止めた。「江戸の三男」といえば与力、相撲取り、そして火消しの頭。憧れと尊敬を集めた▼町火消しの誕生は約300年前。心意気は現代の消防団に息づく。地域を守るだけでなく、職を持ち、まちづくりにも関わる。頭が下がる。コロナ下の医療従事者と同じように、ふるさとにもヒーローはいる▼江戸町人の5人に1人が火消しだった時期もあるらしい。現状に照らせば、うらやましい限りである。待遇改善などに取り組むも、消防団員の確保は容易でない。「これにて一件落着」の名案はないものか。