公選法違反事件で懲役1年4月、執行猶予5年の一審判決を受けた河井案里前参院議員が議員辞職した。1カ月半で、事件や不祥事などで国会議員3人が辞職する異常な事態だ。政治に対する国民の信頼を著しく損なっており、政治家は深く反省し、襟を正さなくてならない。[br] 案里前議員は夫で元法相の河井克行衆院議員と共謀し、2019年3~5月、参院選広島選挙区を巡り広島県議4人に計160万円を渡したとして公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われた。公判で「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」と無罪を訴えたが、東京地裁は現金授受の時期や状況から「選挙買収だった」と退け、案里前議員と検察双方が控訴せず、有罪が確定している。[br] 案里前議員は辞職にあたって「金員で人の心を買うことはできない、というのは私の信念」とコメントを発表した。だが、心は買えなくても、選挙の票を買収できるのは過去の事例で明らかだ。[br] 克行議員は地元議員ら計100人に計2900万円余りを配ったとして公選法違反罪に問われ、別の審理が続いている。案里前議員の判決では「現金交付は克行議員が全体を計画し、取り仕切った」と認定している。[br] 問題なのは、選挙前に自民党本部から政党交付金1億2千万円を含め計1億5千万円が案里前議員側に交付されたが、使途が明確にされていないことだ。同じ選挙区で立候補した自民党現職の10倍という破格の扱い。税金が原資の政党交付金は、使途の報告が義務づけられているが、明らかにされていない。買収資金に使われたのではないか、という疑惑は残っている。[br] さらに案里前議員は逮捕・保釈後、一度も国会の本会議に出席せず、地元の選挙区でも何ら事件の説明をしていない。それでいて逮捕後、これまでに歳費や文書通信交通滞在費など計約1353万円を受け取っているのはやはり釈然としない。[br] 昨年12月22日、吉川貴盛元農相が体調不良を理由に議員辞職、その後、収賄罪で在宅起訴された。そして2月1日、緊急事態宣言下の東京・銀座のクラブでの深夜飲食問題で公明党の遠山清彦衆院議員が辞職し、自民党衆院議員3人が離党に追い込まれた。[br] 国会議員の事件、不祥事続きだ。政治家の質が低下したと嘆くだけでは済まされない。選んだ有権者にも責任がある。衆院議員任期満了の10月までには総選挙が実施される。後悔のない投票を考えたい。