天鐘(2月8日)

戦後から高度経済成長期までの日本は、皆が貧しかった。だから身の回りの道具が壊れれば修理して使い続けたし、ズボンや靴下に穴が空けば、「継ぎ」の布を当てて繕った▼その昔、「東海道」というあだ名の少年がいた。洋服が継ぎはぎだらけで、数えてみたら5.....
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 戦後から高度経済成長期までの日本は、皆が貧しかった。だから身の回りの道具が壊れれば修理して使い続けたし、ズボンや靴下に穴が空けば、「継ぎ」の布を当てて繕った▼その昔、「東海道」というあだ名の少年がいた。洋服が継ぎはぎだらけで、数えてみたら53カ所も。「五十三次(継ぎ)」…というわけだが、それは良くできた笑い話。ともあれ、物を大切にした時代だった▼糸へんに「善」。「繕う」という漢字を見つめていると、その行為の中に「もったいない」の美徳も見えてくる。一針、一針に心を込める。裁縫の優しさ、ありがたさを改めて思う、今日8日の「針供養」である▼折れたり、曲がったりした針を豆腐などに刺して神社に奉納、1年間の労をねぎらう。一説には中国から伝わり、江戸時代に広まったとされる美しい風習。裁縫の上達を祈る祭りとして、昔は多くが参加した▼今はほとんどが洋裁・和裁を学ぶ学校などの行事として見られるぐらいである。世に物があふれ、修繕するよりも、新品を買った方が早い時代。もう「繕う」も先細る一方かと思っていたら、そうでもないらしい▼国会の辺りに日々、せっせと繕う人がいる。深夜に銀座のクラブに行った人の弁明、選挙違反に問われた議員のコメント、おまけに女性蔑視発言への言い訳も…。こちらは早く消えてほしい習わしだ。醜い繕いは、綻(ほころ)びるのも早い。