天鐘(12月10日)

チベット高原とヒンドスタン平原を隔てる急峻(きゅうしゅん)。「世界の屋根」と称されるヒマラヤ山脈である。生命を拒否するように高所は酸素が薄く酷寒。世界最高峰のエベレストは北極や南極と並ぶ「第3の極地」にそびえる▼南半球にあったインド大陸が北.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 チベット高原とヒンドスタン平原を隔てる急峻(きゅうしゅん)。「世界の屋根」と称されるヒマラヤ山脈である。生命を拒否するように高所は酸素が薄く酷寒。世界最高峰のエベレストは北極や南極と並ぶ「第3の極地」にそびえる▼南半球にあったインド大陸が北上し、ユーラシア大陸と衝突。海底が天に向かって押し上げられた。5千万年前の地殻変動である。そして今、ネパールと中国の国境にある頂が少し高くなったと話題だ▼小数点以下まで刻んで8848・86メートル。諸説あり、両国が測り直した。ただし大陸は現在も移動を続け、聖山は年にミリ単位で“成長”。一方で温暖化が進めば、基点の海面が上昇するから標高は下がる。そもそも5千万年後の世界地図は全くの別物なのだろう▼妄想を重ねつつ、違和感を覚えた。両国の共同発表がなぜ「友情」「繁栄」の証しなのか。中国は近年、経済支援でネパールに急接近。その向こう側にいる国を強く意識したメッセージに聞こえてくる▼中国とインドの緊張が再び高まっている。国境紛争は半世紀以上の長きにわたるが、ヒマラヤ周辺で6月に起きた衝突では45年ぶりに死者が出た。中央アジアの主導権を巡り、軍事増強を続ける二つの大国が小国を挟んでにらみ合う▼いま一度、世界を見渡す。至る所で対立の火種がくすぶっている。戦渦につながりかねない地殻変動である。しかと目を凝らさねば。