天鐘(12月6日)

おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に―。ご存じ『桃太郎』である。多くの方が諳(そら)んじているであろう出だしは老夫婦の日常。おとぎ話ではあるものの、日本の原風景が反映されているようだ▼寒村にある小欄の実家は薪(まき)ストーブで暖.....
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 おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に―。ご存じ『桃太郎』である。多くの方が諳(そら)んじているであろう出だしは老夫婦の日常。おとぎ話ではあるものの、日本の原風景が反映されているようだ▼寒村にある小欄の実家は薪(まき)ストーブで暖を取る。さすがに洗濯は機械任せだが、秋になると裏山で柴を刈る。育ちが悪い木は間引いて、下草も払う。焚き木は大きな薪と一緒に乾燥。重要な冬への備えである▼ガスが普及するまで欠かせなかった焚(た)き木や薪も、食卓に彩りを添える瑞々(みずみず)しい山菜やキノコも。人々は身近な自然に寄り添って生きてきたはずだが。農山村の暮らしを支えてきた里山の荒廃が進んでいる▼「ありのままの自然」は美しいが、適度に手を入れなければ山は荒れる。間伐や除伐は光を呼び込み、再生を促し、豊かな恵みをもたらす。かつては日々の営みによって持続的な共生のサイクルが成り立っていた▼森、田畑、川が調和する里山は人と自然の繋がりを象徴する存在。深山と都市の中間にあり国土の4割を占める。郷愁から憂うのではない。動植物のにぎわい、澄んだ空気、水、土が消えていく。他人ごとではない▼失って初めて価値に気付かされる。人生でも、人類の歴史でも。おとぎ話を題材に、「物語が変わる前に…」と地球環境の保全を呼び掛けるCMがある。里山にも目を向けて―と訴えを重ねてみる。