新型コロナウイルス感染が再び急拡大し、今春の急迫した事態などで打撃を受けた景気の立て直しに影を落としている。[br] 感染者や重症者が増えている地域では、飲食店などの営業時間短縮や休業が要請された。菅政権が推進する「Go To トラベル」も対象から札幌市と大阪市が外され、東京都は高齢者らの利用自粛を求めている。[br] これまでウイルス感染の拡大により、苦しい経営を強いられてきた交通、宿泊、観光、飲食業などでは雇用状況のさらなる悪化が懸念される。[br] 菅義偉首相は臨時国会で国民の雇用を守ると表明、政府は雇用調整助成金の特例期間再延長などの対策を講じている。だが厳冬期本番に向かう中、収束が見通せないコロナ禍に国民の不安は募る。政府には長期的な視野に立った手厚い支援施策を適切に実行するよう望みたい。[br] 政府によると、コロナ関連で解雇や雇い止めに遭った労働者は11月27日時点で、見込みを含め全国で7万4千人を超えた。増加の勢いは鈍っているが、数字に表れないケースもあろう。10月の完全失業者数は215万人と9カ月連続で増加した。[br] 政府は失業防止対策の柱とする雇用調整助成金の特例措置の期限を、年内から来年2月まで延長することを決めた。企業が労働者を休ませ雇用を維持する際に支払う休業手当などを穴埋めする制度で、特例として助成率や上限額を引き上げた。[br] ただ助成金を申請しない企業も多いようだ。不正への警戒は欠かせないが、制度が活用されるよう、より簡便で迅速に給付できる仕組みにするとともに、事態の長期化に備えた特例期間などの再設定も必要だろう。[br] コロナ禍はパートや派遣といった立場の弱い非正規労働者を直撃している。10月の調査では、非正規労働者は前年同月より85万人減少し、特に女性の減り方が大きかった。失業を免れても収入減に陥る人も多く、子育てするシングルマザーらの苦境は見過ごせない。[br] ひとり親世帯の支援を求める声が高まり、政府は臨時特別給付金を年内に再支給する方向という。早急に実施し、継続的な支給も検討すべきだ。[br] 一方、来春卒業予定の大学生の就職内定率も前年に比べて大きく落ち込んでいる。こうした不安定な雇用状況が続けば、生活を守ろうとする国民の自助努力も限界に達しかねない。政府には助成金のような緊急対策に加え、多様な企業の連携や新事業の展開を促すなど、雇用を生む施策を進める責任がある。