ミャンマー総選挙で、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が率いる与党、国民民主連盟(NLD)が地滑り的勝利を収めた。NLDは改選議席数の83%を占める396議席を得て、2015年の前回総選挙で獲得した議席を上回った。最大野党で国軍系の連邦団結発展党(USDP)は前回を下回る33議席にとどまった。[br] 前回総選挙は、半世紀以上にわたる国軍主導の政治を終焉しゅうえんさせる歴史的なものとなり、民主化の象徴であるスー・チー氏のNLDが圧勝、初めて政権を握った。今回は、NLD政権のこの5年の審判でもあった。[br] 国軍は依然として強い影響力を持つ。NLDが議席を減らすとみられていたが、再び圧勝したのは、国軍に対する国民の不信感の表れと言える。二度と軍政に戻らせないとの国民の思いは強い。[br] スー・チー氏が求める「真の民主化」は1期目では実現できず、NLD政権2期目も前途多難だが、国民の願いに応え、民主化を進展させなければならない。[br] スー・チー氏が求める真の民主化の核心は、軍政が制定した憲法の改正にある。国軍は、自らの優位性を保障した憲法を通じてさらなる民主化に立ちはだかっている。憲法規定では、議席の4分の1は軍人に割り当てられている。スー・チー氏の大統領就任も事実上、禁じており、国防相ら治安担当3閣僚は国軍総司令官が任命する。[br] 改憲には議会の4分3を超す賛成が必要で、軍の同意なしに改憲できない仕組みだ。NLDはことし3月、軍人議員枠の段階的縮小などの改憲案を提案したが、軍に拒否された。[br] スー・チー氏は、この5年間、目立った成果を得られなかった。国軍との関係を改善しない限り、民主化のさらなる前進さは難しい。スー・チー氏のジレンマは深い。NLDが最優先課題に掲げた少数民族武装勢力との和平協議も停滞したままだ。[br] イスラム教徒少数民族ロヒンギャ約70万人が隣国バングラデシュに逃れた迫害は国軍が主導したものだが、スー・チー氏の対応が不十分だと国際社会から批判を受けた。ノーベル平和賞を返還しろとの声も出ていた。[br] 国際司法裁判所はことし1月、ロヒンギャへの迫害を止めるようミャンマー政府に求める仮処分命令を出した。[br] 日本は、欧米とは異なり、スー・チー氏や国軍ともパイプを持ってきた。その関係を生かし、ミャンマーの民主化発展に向けた支援に努めてほしい。