天鐘(11月25日)

寒さが次第に厳しくなるこの時季は、いよいよ本格的な冬野菜の出番。大根、白菜、そしてネギ…。素朴でありふれた食材ながら、夕げの鍋に集えば主役に迫る存在感である▼季節の素材を、折々の食べ方で味わう。四季の国に生まれた幸せを改めて思う。きのう11.....
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 寒さが次第に厳しくなるこの時季は、いよいよ本格的な冬野菜の出番。大根、白菜、そしてネギ…。素朴でありふれた食材ながら、夕げの鍋に集えば主役に迫る存在感である▼季節の素材を、折々の食べ方で味わう。四季の国に生まれた幸せを改めて思う。きのう11月24日は「いい日本食」と読ませて「和食の日」。伝統の食文化を再認識してほしいと、和食文化国民会議が定めている▼ユネスコの無形文化遺産への登録は7年前。和食は大きなブームにもなった。だが、その本質は今、どれだけ海外に浸透していよう。料理研究家の土井善晴さんは、美食の国フランスでさえ「寿司ぐらい」のレベルと言う▼食べておいしいだけではない。土地土地の新鮮な食材が生きる。器に盛られるのは、自然の美しさや季節の移ろい。もてなす心遣いまで含めて「食」と呼びたくなる、しなやかで独特な文化である▼昨今、その自慢の伝統食は影が薄い。様々な事情はあろうし、コンビニが悪いわけでもない。けれども、豊かな和食の魅力が最も輝くのは、家庭の台所のように思う。巣ごもりの中で、見つめ直してみたい食の財産だ▼海外に和食を理解してもらうべく、土井さんは日本の調理法「和える」を説く。「混ぜる」は素材を全くの別物にする。対して、互いをそれぞれ引き立て合うのが「和える」。多様性も思わせる、文字通り奥深き和の心である。