弘前市の飲食店で発生した新型コロナウイルスの大規模クラスター(感染者集団)は、弘前保健所管内を中心に新たな感染者が増加し続けている。ウイルスの感染期間は14日間と言われ、今月11日に飲食店が休業してから25日で2週間。弘愛会病院のクラスターが院内感染に発展するなど収束の兆しは見えない。2次、3次感染の拡大は津軽圏域の医療提供体制への影響も懸念され、医療崩壊を防ぐ対策が急務となっている。[br][br] 「これだけの2次感染があると3次感染は必然的に起こる。感染の広がりはまだまだ予断を許さない」[br][br] 24日夜、県庁で会見した県感染症疫学コーディネーターの大西基喜医師は、冷静さを保ちながらも今後の感染拡大に危機感をあらわにした。[br][br] 一連の感染者は24日時点で計143人(県外4人を含む)。1日当たりの感染者数は、16日の26人が過去最多となっている。発生当初は飲食店に直接関係した従業員や利用客の感染が相次いで判明。19日からは同居人や知人、職場関係者の2次、3次感染が判明している。[br][br] 感染者が増加し続ければ、地域の医療体制への影響は避けられない。現在は津軽圏域の医療機関を中心に患者が入院し、隣接する圏域でも一部患者を受け入れている。だが、患者の転院は、他地域への感染拡大の危険性をはらむ。[br][br] クラスターが発生した弘愛会病院では24日に院内感染を確認。弘前管内の民間医療機関でも新たな感染者が発生するなど、医療体制の維持は最重要課題だ。大西医師は「医療崩壊の兆しはまだ見えないが、あり得る話。最悪の状況を見据えた対策が必要」と述べた。[br][br] 今回の大規模クラスターの発生を巡り、一報を受けた弘前保健所の初動対応も問題視されている。飲食店側は今月初旬、従業員が体調不良を訴えたため同保健所に対し、複数回相談。同保健所は県外や海外の渡航歴がないことなどを理由に検査は行わず、地域の医療機関の受診を促していた。[br][br] 結果的に利用客だった60代男性医師の感染を知った飲食店側が同保健所に再度連絡。その後に検査が行われたため、次々と従業員の感染が判明していった。[br][br] 県は、感染拡大が落ち着いた時期に同保健所の対応を検証する方針。「県外の感染拡大地域との関連がなくても、飲食店の業態に合わせて検査の要否を柔軟に判断できなかったか確認する」との考えを示した。