天鐘(10月22日)

約1世紀前に大流行したスペイン風邪では、当時の内務省も注意喚起に躍起だったようだ。〈時節柄芝居、寄席、活動写真などには行かぬがよい〉と、国民向けの「予防心得」にある▼世界の感染者は5億人。高くない医療水準の中での懸命の呼び掛けだ。標語入りの.....
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 約1世紀前に大流行したスペイン風邪では、当時の内務省も注意喚起に躍起だったようだ。〈時節柄芝居、寄席、活動写真などには行かぬがよい〉と、国民向けの「予防心得」にある▼世界の感染者は5億人。高くない医療水準の中での懸命の呼び掛けだ。標語入りのポスターには〈テバナシにセキをされては堪(たま)らない〉。中には〈マスクをしない命知らず〉の直球もあった▼予防の心得に綻(ほころ)びが出たか。弘前市の飲食店などで新型コロナのクラスターが発生、青森県内の感染者が一気に増えている。しばらく小康状態だっただけに衝撃は小さくない。ひとたび感染が広がったときの怖さを改めて思い知る▼人けの消えた街の声が本紙にあった。「どこまで広がるの」と、市民は不安を募らせる。行政側いわく、「収束できるかどうかの瀬戸際」だそうだ。ここは一つ、冷静に疫病と向き合いたい▼われわれがしっかりと胸に留め置くべき心得もある。厳に慎みたい、感染者への偏見や誹謗(ひぼう)中傷だ。以前、「八戸ナンバーお断り」という津軽のラーメン店があった。感染したくて、なった人などいない。ネットで尖(とが)る心も悲しい▼あのとき、あの場に〈行かぬがよかった〉と悔やんでいる方もいよう。もっとも、決して対岸の火事ではない。今こそ必要なのは「正しく恐れる」の原点か。テバナシでセキはご法度、もちろんマスクも忘れずに―である。