【連載・決断の行く末 動き出す高レベル処分地選定】(3)抑止力

梶山弘志経済産業相(右)に青森県内を最終処分としないとする確約などを確認する三村申吾知事(左)=2019年11月、東京
梶山弘志経済産業相(右)に青森県内を最終処分としないとする確約などを確認する三村申吾知事(左)=2019年11月、東京
「特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難いことを宣言する」 北海道で2000年12月に制定された“核抜き条例”の末文だ。寿都町(すっつちょう)が高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた文献調査に前向きな姿勢を示した.....
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 「特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難いことを宣言する」[br][br] 北海道で2000年12月に制定された“核抜き条例”の末文だ。寿都町(すっつちょう)が高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた文献調査に前向きな姿勢を示した際に問われたのが、この条例との整合性だった。[br][br] 鈴木直道道知事は条例を踏まえ、副知事を町に派遣し、応募を控えるよう要請。さらに「10万年先の将来を1カ月で判断するのは拙速だ。条例を順守してもらいたい」と、反対の姿勢を明確にした。[br][br] 知事の意向も手伝い、「地元以外からの反対に耳を貸すつもりはない」と強気だった片岡春雄町長も、応募の判断を示す時期を9月中から10月以降に延期するなど、態度を軟化させる。[br][br] だが法律上、文献調査実施に知事の了承は必要ない。鈴木知事の姿勢に、支持基盤である自民党の道議から「越権行為」と批判が上がり、知事の言葉は「反対する」から「慎重な対応を」に移ろっていった。[br][br]   ■    □[br][br] 知事のトーンダウンに反比例するように、寿都町と神恵内(かもえない)村の応募に向けたステップは前進し、最終局面に入っていった。[br][br] 地元商工会の文献調査誘致の請願が神恵内村議会で採択された翌日の10月9日、村役場に訪れた経済産業省幹部は条例と文献調査の関係性を報道陣に問われ、こう説明した。[br][br] 「文献調査は地域固有のデータを収集し、自治体と共有して進めていくという意味で、対話活動の一環。(調査の最中に)条例にあるような廃棄物の持ち込みは一切ないし、調査を行う上で条例との関係は特に問題がないと考えられる」[br][br] 条例には文献調査の実施を抑える力がない―との見解を暗に示した。[br][br]   □    ■[br][br] 翻って青森県では、故北村正●氏、木村守男氏、そして現職の三村申吾氏までの知事3代が、国と「県内を最終処分地にしない」とする確約文書を交わしてきた。さらに、三村知事は関係閣僚が替わるたびに確約への姿勢を確認している。[br][br] ただ、07年に東通村の越善靖夫村長が最終処分場の受け入れ議論を排除しない考えを示すなど、県内では誘致論がたびたび表面化してきた。[br][br] 高レベル廃棄物が一時貯蔵されている六ケ所村の関係者は「核燃料サイクル事業への理解が進んでいることを背景に、処分場を受け入れてもいいという考えの村民もいる」と明かす。[br][br] 県内には複数の原子力施設が立地し、原子力に対する拒絶反応が小さい地域もある。今後、多額の交付金を目当てに調査応募に動く市町村が出てきても不思議ではない。[br][br] 県内での最終処分を許容してもいいのでは―と考える村関係者に、確約の効力をどう考えるかを問うと、疑問を投げ返してきた。[br][br] 「処分場の受け入れに都道府県知事の了解が法的に必要な以上、そもそも確約に意味があるのか」[br][br]※●は「哉」の「ノ」がない異体字梶山弘志経済産業相(右)に青森県内を最終処分としないとする確約などを確認する三村申吾知事(左)=2019年11月、東京