【世界のJOMONへ】第4部 見えてきた登録(5)地下の遺跡どう説明

三内丸山遺跡で導入しているITガイド(上)と伊勢堂岱遺跡の環状列石
三内丸山遺跡で導入しているITガイド(上)と伊勢堂岱遺跡の環状列石
青森県など4道県が世界遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」は遺構の大半が地下にある。この場所に何があり、当時の人々がどんな暮らしをしていたのか、訪れた人たちに説明することが大きな課題となる。その手段として「復元」という方法があるが.....
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 青森県など4道県が世界遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」は遺構の大半が地下にある。この場所に何があり、当時の人々がどんな暮らしをしていたのか、訪れた人たちに説明することが大きな課題となる。その手段として「復元」という方法があるが、あくまで遺跡の保存に影響を与えないことが大前提。復元と保存のバランスをとりながら遺跡の価値を分かりやすく伝える工夫が求められる。[br] 遺跡を傷つけずに当時の状況を伝える手段として、IT技術の活用がある。青森市の三内丸山遺跡では、縄文時代の景観を仮想現実(VR)で復元する「ITガイド」を導入している。受け付けで貸し出している専用のタブレットを持って遺跡内を歩き、GPS(衛星利用測位システム)ポイントに近づくと自動的にVRが起動。現実の風景にタブレットをかざすと、縄文時代の光景を見ることができる仕組みだ。[br] 例えば大型竪穴建物内でVRを起動すると、炉を囲んで煮炊きや食事をする人々の姿が映し出され、まるで縄文時代の「ムラ」をのぞき見ているような体験ができる。[br] ITガイドは2015年から開始。日本語のほかに英語や中国語など6言語に対応しており、毎年約800件の貸し出し実績がある。VRのほか、各地点にある遺構の詳しい説明を読むことも可能。担当者によると、個人で遺跡を訪れた人がガイドの代わりに利用することが多く「縄文の雰囲気を体感できる」と好評だという。[br] 一方、遺構そのものが残っている場合は、出土した実物を生かした展示が可能だ。秋田県鹿角市の特別史跡「大湯環状列石」では、出土した石をその場で展示。約4千年前の人々が運び、並べたものを直接見ることができる。[br] 環状列石周辺に解説や案内の看板はほぼ設置されていない。遺跡のガイダンス施設である大湯ストーンサークル館の赤坂朋美主任は「できるだけ縄文時代の景観に近づけるため、現代のものを置かないようにしている」と説明。訪れた人には、まず同館で遺跡の成り立ちについて学んだ後、環状列石へ足を運んでもらうように工夫している。[br] 同時期の環状列石が見つかった同県北秋田市の伊勢堂岱遺跡も実物を展示。同遺跡では、出土した環状列石全てを発掘せず、一部を残して地中に保存している。将来的に科学が進歩し、新たな分析方法などが確立された場合、調査できる余地を残しておくためで、現状を保存することによって、将来的にもさまざまなメリットがある。[br] ただ、縄文遺跡群のように見えない地下の遺跡を分かりやすく説明するには、建物の復元やIT技術の活用が不可欠。世界遺産登録後を見据えた試行錯誤は今後も続く。三内丸山遺跡で導入しているITガイド(上)と伊勢堂岱遺跡の環状列石