【連載・強まる再編圧力 青銀、みち銀の行方】(下)

経営環境が厳しさを増す青森銀行(上)とみちのく銀行。生き残る道を模索している
経営環境が厳しさを増す青森銀行(上)とみちのく銀行。生き残る道を模索している
青森県を地盤に半世紀以上、しのぎを削ってきた青森銀行とみちのく銀行。その歩みは対照的だ。 青銀は、県内初の銀行として1879年に創業した第五十九国立銀行が前身。1943年に第五十九、青森、八戸など5行が合併し、現在の青銀が誕生した。県都・青.....
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 青森県を地盤に半世紀以上、しのぎを削ってきた青森銀行とみちのく銀行。その歩みは対照的だ。[br] 青銀は、県内初の銀行として1879年に創業した第五十九国立銀行が前身。1943年に第五十九、青森、八戸など5行が合併し、現在の青銀が誕生した。県都・青森市を拠点に県内で着実に勢力を拡大。隣県の岩手銀行、秋田銀行と連携し、経営基盤強化に取り組んできた。[br] 一方、みち銀は1921年設立の青森貯蓄銀行(後の青和銀行)が前身。76年に青和銀行と弘前相互銀行が合併し、全国初のひらがな銀行として始動した。弘前市を中心に収益を上げ、函館やロシアなど外へ飛び出すことで成長。地銀と関係を深めるSBIホールディングスとの結びつきを強め、サービス拡充を図る。[br] 堅実経営で発展を遂げた青銀、県内の枠を超えて挑戦を続けたみち銀―。企業風土が異なる両行を“犬猿の仲”と見る向きも強い。ただ、取り沙汰されている経営統合案を巡っては「あり得ない話ではない」と納得する関係者は多かった。[br]   ◇    ◇[br] 両行の関係に地殻変動が起きたのが、昨年10月に発表された「包括的連携の検討開始」だ。これを契機に、両行は現金自動預払機(ATM)の手数料相互無料化や、商談会の共同開催など非競争分野で連携を模索し始めた。ライバル同士の歩み寄りに当時、関係者の間では「資本提携の準備」との噂も飛び交った。[br] 今回の経営統合案が現実味を持って受け止められたのも、結びつきを深める両行の動きがあったからだ。地域金融が専門の青森中央学院大の山本俊准教授は「両行の歩みを考えれば、(包括的連携に)よく踏み切ったと感じた。生き残るための経営判断だったのだろう」と振り返り、「連携がなければ経営統合の話が出ることも考えられなかった」との見方を示す。[br]   ◇    ◇[br] 生き残りのため急接近する両行だが、経営統合は地域経済への影響が大きい。競争関係がなくなることで、サービスの低下や県全体の活力が失われかねず、関係者からは負の側面を不安視する声が聞かれる。[br] みち銀と取引のある経営者は「選択肢がなければ質が低下しても取引を続けざるを得ない」と懸念し、「これまでのような深い付き合いが続けられるのか」と不安を口にする。[br] 内情を知る元青銀役員は「選択の幅が狭まるなど、統合は利用者にとっていいことはない」としつつ、「このままなら共倒れの可能性すらある」と苦しい現状を明かす。[br] 統合の影響について「ほかの銀行の進出は想定しづらく利用者の選択肢は減る。寡占化で銀行も努力しなくなり、社会的責任が果たされなくなる恐れがある」と指摘する山本氏。一方で、両行の経営体力が落ち続けている状況を踏まえ、「立ちゆかなくなってからでは遅い」と統合を含めた経営改革の必要性を訴える。[br] 地域経済が衰退する中、金融面から活性化を支える地銀の役割は増している。地域にとって、何が最善の策なのか―。両行の決断が注目される。経営環境が厳しさを増す青森銀行(上)とみちのく銀行。生き残る道を模索している