【連載・強まる再編圧力 青銀、みち銀の行方】(中)

5月14日午後。みちのく銀行本店の会見場は緊張感に包まれていた。リーマン・ショックの影響を受けた2009年以来の赤字決算が発表される予定だったためだ。 19年11月に、20年3月期通期の業績予想を40億円の赤字に修正。その後、感染が拡大した.....
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 5月14日午後。みちのく銀行本店の会見場は緊張感に包まれていた。リーマン・ショックの影響を受けた2009年以来の赤字決算が発表される予定だったためだ。[br] 19年11月に、20年3月期通期の業績予想を40億円の赤字に修正。その後、感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で「どこまで膨らむか」が注目された。[br] 会見で明らかにされた赤字額は45億9600万円。藤澤貴之頭取は「厳しい決算だが、将来を見据えた内容だ」と強調した。[br] 一方、青森銀行は15日に決算を発表した。業績予想より大きく落ち込み、純利益は前期比54・3%減の14億7千万円に。成田晋頭取は「計画を大きく下回った。じくじたる思いだ」と無念さをにじませた。[br]   ◇    ◇[br] 両行の決算は、昨年10月の消費増税で業績が落ち込んだ中小事業者の苦境を反映し、厳しい数値が並んだ。[br] 青銀は経常収益(連結)こそ増収だったが、経常利益は23億2400万円(53・1%減)と激減した。銀行本体の業績悪化を、好調だったリース子会社の収益でカバーした格好だ。[br] みち銀は大半の項目で大幅に減少。中でも経営の健全性を表す自己資本比率は連結で7・62%(0・36ポイント減)、単体で7・41%(0・34ポイント減)と全国の地銀でも最低ランクだった。国内基準の4%を上回るが、安定的な経営には、さらなる資本蓄積が不可欠だ。[br] 同行は、09年に受けた200億円の公的資金の返済も経営課題。24年の完済へ利益剰余金を積み上げるが、貸出金利息収入が伸びず、コア業務純益で計画を下回る状況が続く。[br] 今期の業績予想で改善を見込む両行だが、新型コロナウイルスの影響が直撃するため、先行きは不透明だ。県内経済の停滞は長期化の様相を呈し、今後企業の倒産や休廃業が多発すれば、共に業績悪化は避けられない。[br]   ◇    ◇[br] 銀行は預金を貸して利子を得る貸出業務、有価証券運用、手数料収入を収益の3本柱とする。[br] だが、人口や事業者が減り、貸し出しの利子引き下げ競争が激化。青銀の元役員は「貸出金利はこれ以上低下しないところまで来ている」と語る。日銀の大規模緩和による金利低下もあり、預金と貸し出しの金利差の「利ざや」が縮小し、従来の収益モデルは限界を迎えている。[br] 地域金融が専門の青森公立大の國方明准教授は「収益源の転換が不可欠。そのためには経営体力が必要で、特例法による地銀再編が加速する」と分析する。[br] 長引く低金利、人口減で先細りする需要、苦しい経営、地銀の再編を促す特例法の施行、特例法による成果を示したい菅義偉首相の思惑…。両行が置かれた環境を整理しながら、國方氏はこう指摘した。[br] 「ライバル同士が手を結ばなければならないほど状況は厳しい。(経営統合への)外堀は埋まってしまっている」