時評(9月9日)

安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長による三つどもえの選挙戦がスタートした。 7年8カ月に及ぶ歴代最長政権となった安倍政治の総括と評価、新型コロナウイルス対策と経済再生が主な争点.....
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 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長による三つどもえの選挙戦がスタートした。[br] 7年8カ月に及ぶ歴代最長政権となった安倍政治の総括と評価、新型コロナウイルス対策と経済再生が主な争点だ。コロナ禍により世界中で既存の価値観が揺れ動き、日本のよって立つ平和と民主主義、人権、法の支配、国際協調主義などの理念をどう守り抜くのかが問われる。[br] アベノミクスや憲法改正、外交・安全保障などの政策課題とともに、理念と政治信条を訴える国民に開かれた論戦を展開するよう3氏に注文する。[br] 安倍政権の汚点となった森友・加計、桜を見る会疑惑での政治の私物化や公文書改ざん問題は民主主義の土台を破壊する。3氏は政治への信頼回復の決意と具体的方途を示すべきだ。[br] 総裁選は党所属の394人の国会議員票と、47都道府県連各3票の地方票141の計535票により争われる。安倍首相の突然の辞任表明を受け「政治の空白は許されない」との理由から、全国一斉の党員・党友投票を省いた国会議員中心の総裁選となったのは残念だ。[br] ほとんどの都道府県で党員・党友による予備選が行われる。国民の意識により近い地方票の投票結果は、今回の総裁選だけでなく、次回以降の総裁レースにも影響を及ぼす。結果に注目したい。[br] 政治姿勢や政策を巡る3氏の相違点は、かなり明らかになっている。現政権を官房長官として支えた菅氏は「安倍路線の継承と前進」、外相、政調会長を務めた岸田氏は、安倍首相の強権的手法を念頭に「分断から協調へ」、安倍政治に距離を置き続けてきた石破氏は「納得と共感の政治」を掲げた。さらに掘り下げた論戦を期待したい。[br] 菅氏は党内5派閥の支持を得て、国会議員票で岸田、石破両氏を大きくリードし、優勢に立つとみられている。総裁選後の新政権の組閣・党役員人事をにらんで、告示前から菅氏支持の5派閥間で主導権争いが始まったのは見苦しい限りだ。[br] 総裁選を消化試合に終わらせ、永田町の論理で首相を決める手法を踏襲しては、自民党への国民の信頼感は失われ、新内閣への支持は高まらないだろう。[br] コロナ禍で全国遊説や街頭演説会が見送られたのはやむを得ないが、3氏がそろって所信を明らかにする対決型の討論の場を多く設けるべきだ。 自民党の国民政党としての底力が問われる総裁選でもある。