コロナ禍、成人男性の引きこもり相談件数増加/北奥羽地方

八戸市内で開かれた講演会では、県立精神保健福祉センターの佐藤理恵さんが引きこもりの現状や支援について説明した=8月下旬 
八戸市内で開かれた講演会では、県立精神保健福祉センターの佐藤理恵さんが引きこもりの現状や支援について説明した=8月下旬 
引きこもりの長期高年齢化による「8050問題」が社会問題となる中、北奥羽地方でも引きこもりの相談件数が増加している。同地方で活動する支援団体に寄せられた本年度の相談件数は、8月末時点で累計70件近くに上り、昨年度を上回る見込みだ。特に成人男.....
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 引きこもりの長期高年齢化による「8050問題」が社会問題となる中、北奥羽地方でも引きこもりの相談件数が増加している。同地方で活動する支援団体に寄せられた本年度の相談件数は、8月末時点で累計70件近くに上り、昨年度を上回る見込みだ。特に成人男性の引きこもりに関する相談が目立っているといい、支援団体は「新型コロナウイルスの影響により社会情勢が不安定で仕事ができなかったり、外出機会が減ったりしているのも要因」と分析。早期の実態把握と支援の充実が求められる。[br] 内閣府が2018年に40~65歳を対象にした引きこもり調査では、当事者数は推計61万3千人。期間が7年以上の人が5割を占めるなど、長期高年齢化が浮き彫りになった。特に、就職氷河期の1990年代に顕著だった10~20代の若者の引きこもり問題が解決されなかったために、引きこもったまま50代を迎えた子を、80代の親が支えざるを得ない「8050問題」も顕在化してきている。[br] 息子の引きこもりに悩む北奥羽地方の60代男性は「自分が元気なうちに息子の引きこもりをどうにか解決したい」と胸の内を明かす。40代の息子は大学卒業後、思うように就職できずに引きこもりがちになり、家族との会話もほとんどない状態だという。「自分らが元気なうちに(息子が)最低限の生活を維持できるようにしておかないと」と焦燥感を募らせる。[br] 8月下旬に八戸市内で開催された引きこもりに関する講演会。講師を務めた青森県立精神保健福祉センターの佐藤理恵さんは「家族は不安から、本人を叱咤激励しがち。まずは本人を肯定し、話し合いができる関係に戻していくことが大切だ」と強調した。[br] 引きこもりの人を支援する階上町の学習サークル「サンハウス」の川村克彦代表は、家族の関わり方の難しさに加え、引きこもりに対する偏見の根強さが長期化につながりやすい―と分析。「特に地方は都市部と比べて近所づきあいがあり、近隣住民の目が気になって外に出られなくなるケースも多い」と指摘する。[br] 特に今年はコロナ禍の影響で学校生活になじめない大学生や、雇い止めなどで家にこもりがちになった人や家族からの相談が全国的に増えているといい、川村代表にも関連する相談が数件寄せられているという。八戸市健康づくり推進課の担当者も「相談件数は今のところ大きな変動はないが、今後は増加が懸念される」との見解を示す。[br] 「誰にでも起こりえる問題。本人の立場や状況をよく理解し、歩み寄ることが大切」と川村代表。県に対しても実態を把握するための調査を要望しているといい、「経済的支援だけでなく、引きこもりの人が再チャレンジできるような社会づくりが必要だ」と訴えている。八戸市内で開かれた講演会では、県立精神保健福祉センターの佐藤理恵さんが引きこもりの現状や支援について説明した=8月下旬