山林に放置されている未利用の間伐材(林地残材)などを地域通貨で買い取る「木の駅プロジェクト」の取り組みが、三戸郡内で広がっている。2016年度に青森県内で初めてスタートした新郷村は現在、登録会員数が86人に上るほか、18年度に始まった三戸町でもたばこ農家らを中心に徐々に制度が浸透。山間部の自治体では、広大な民有林をいかに適切に管理するかが大きな課題で、県三八地域県民局などは今後、ほかの自治体でも制度の普及を目指す考えだ。[br] 同プロジェクトは、山林所有者らが林地残材を出荷し、地元の商店などで使用可能な地域通貨に換金する“副業型”の林業。業者による間伐などと比べて一度に集材する量は少ないが、個人で木材を収集できるため、取り組むハードルが低いのも特徴だ。県民局の担当者によると、現在、全国で100以上の自治体や団体がプロジェクトをスタートしているという。[br] 村面積の約75%を林野が占める新郷村では、森林資源の利活用を目的とした「木質バイオマス構想」の中核事業として開始し、村内2カ所に木材収集所「木の駅」を開設。山林所有者らが未利用材などを木の駅に出荷すると、スギ1立方メートル当たり6千円(雑木は7千円)分の地域通貨がプロジェクトの事業主体である実行委員会から支払われるシステムだ。木材は三八地方森林組合がまきに加工し、「新郷温泉館」の木質ボイラーで使用する。[br] 三戸町は、町内2カ所に設けた木の駅に間伐材を集約し、実行委が田子町のチップ工場に販売。新郷と同様に、1立方メートルで6千円の地域振興券に交換する。[br] 2019年度は、新郷が355万円分、三戸が64万円分の地域振興券を発行。新郷では、1人で1カ月に10万円分以上の材木を出荷した会員もいたという。[br] 一方、定期的に木の駅に出荷する人は固定化されている傾向にあり、両自治体はさらなる制度の周知を図る方針だ。新郷村の担当者は取材に「個人で集材するには作業の効率性や安全性の面で限界があり、所有者同士が)共同で作業に取り組むケースも増やしていきたい」と展望を語った。[br] 木の駅プロジェクトでは、長期的な山林再生や地域経済活性化の一助となることが期待されるため、同県民局は、本年度中に田子町などでも勉強会を開催する考え。林業振興課の白山俊一主幹専門員は「地域通貨によって地元商店も潤い、木質エネルギーの地産地消も進む。木の駅プロジェクトを通じて、多くの人に森林に関心を持ってほしい」と強調した。