みちのく丸、保存や活用に思い交錯/野辺地町

野辺地町が取得したみちのく丸。屋外展示で風雨にさらされ、劣化が進む=8月、野辺地町の野辺地漁港
野辺地町が取得したみちのく丸。屋外展示で風雨にさらされ、劣化が進む=8月、野辺地町の野辺地漁港
野辺地町が野辺地漁港に屋外展示している復元北前船「みちのく丸」の保存や今後の活用法について、行政や住民の思いが交錯している。町側は「費用に見合った誘客効果が得られていない」などとして最低限の補修による現状維持の方針を示す。これに対し、町民の.....
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 野辺地町が野辺地漁港に屋外展示している復元北前船「みちのく丸」の保存や今後の活用法について、行政や住民の思いが交錯している。町側は「費用に見合った誘客効果が得られていない」などとして最低限の補修による現状維持の方針を示す。これに対し、町民の一部は船体の劣化を危惧し、「このままではただゴミになる」と早急な対策を求める。[br] 同船は、みちのく北方漁船博物館財団が復元。同財団の解散に当たり、北前船の寄港地として歴史的につながりの深い同町に無償譲渡された。[br] 町は18年に約1億円を支出して青森市から輸送し、同港へ陸揚げした。当初は観光の目玉と位置付け、船内見学会やイルミネーション事業などを実施。同船の屋内展示施設などを整備し、誘客や観光の拠点とする構想も持ち上がっていた。[br] 観光資源としての活用の期待が高まった一方、町財政が硬直化する中で進められる、いわゆるハコモノ建設には厳しい意見もくすぶった。表面化したのは昨年の町長選。同船活用に否定的な野村秀雄町長が現職を破り、町の方針は大きく転換した。[br] 同船の維持に関しては一般財源からの持ち出しをやめ、これまで積み立てたみちのく丸地域活性化基金のみから繰り出すことにしたほか、展示施設についても建設を白紙撤回した。[br] 維持費は、冬期間の雪囲いや劣化による修繕などで年間450万円に上り、さらに雨風の浸食を抑える塗装にも別途数百万円を要してきたという。[br] 野村町長は取材に「これまで輸送などにかかった経費も含めて考えると、観光の目玉というほどの誘客効果を得られていない。これ以上の支出は町民の理解を得られない」と強調。今後は、費用を抑えながら現状維持する考えを打ち出す。[br] ただ、同船は屋外で風雨にさらされた状態で展示されており、現在の保存方法では、腐食などで劣化が著しいとの見方もある。町関係者は「現状維持と言っても、何かしらの手を打たなければ、そもそも数年も持たないのではないか」と指摘する。[br] 財源的にもタイムリミットが迫る。同基金の残高は今年3月時点で約4200万円。少なくとも年間450万円かかる維持費を単純に当てはめると、10年後には底を突く計算だ。[br] 岐路を迎えた同船。町民には「大金をかけて整備したのに、壊れていくのはもったいない」と次世代へ受け継ぐ道を探るよう求める声も根強く残る。ただ、町財政との兼ね合いをつけながら、どのように有効活用を図るのか、多くの町民が納得する“未来”を見いだせていないのも現状だ。野辺地町が取得したみちのく丸。屋外展示で風雨にさらされ、劣化が進む=8月、野辺地町の野辺地漁港