二戸市の元小学校教諭浅倉修さん(60)が、手作りピザを提供する「ピザ&喫茶 ASA Club」を市内にオープンさせた。岩手県内でも新型コロナウイルスが飲食店に打撃を与えているが、テークアウトを中心に展開して徐々に常連客を増やしている。ピザを作り始めたのは、東日本大震災の翌年に赴任した同県沿岸部の旧山田町立山田北小で、子どもたちを元気づけようとして焼いたのがきっかけ。「先生のピザ、おいしい」という教え子の言葉が心に温かく残り、開業につながった。[br] 浅倉さんは2012年、被災地への赴任を希望して同校に2年間勤めた。震災直後は行事や学力テストが中止となり、「教員は子どもたちと純粋に向き合う時間が増えた。学校の原点に戻ったような感じで働くことができた」という。[br] 一方で、被災により親が失職して経済的に困窮したり、仮設住宅での生活が長期化してストレスを抱える姿も垣間見えた。[br] そうした子どもたちを励まそうと、浅倉さんは学校での「お楽しみ会」としてピザパーティーを企画。大学時代にイタリア料理店でアルバイトをした経験があるため作り方は知っており、「おいしい」「すごく楽しかった」と喜ばれた。[br] 山田町住民との交流は、二戸市立石切所小に異動してからも続いた。石切所小の保護者が育てたリンゴを山田町の「市」で販売し、収益金を商店街組合に寄付するなどの活動を展開。石切所小でもピザパーティーをしたり、市内の祭りで販売したりするうちに、退職後に店を始めようという思いが膨らんだ。[br] 旧山田北小の保護者から「子どもがまた食べたいと言ってるよ」と教えられたこともあり、キッチンカーで被災地を回って販売することを考えたが、新型コロナによる移動自粛やイベントの相次ぐ中止で断念。[br] コロナ禍の不安は少なからずあったが、「テークアウトを中心にすれば大丈夫だろう」として市内での開店を決めた。[br] 店舗は元スナックで、調理場を改修し、木質ペレットを燃料にして約500度で焼き上げる本格的な窯を設置した。[br] ピザは、強力粉をこねて熟成させた生地の上に、トマトソースのバジルやガーリック、明太子や納豆、ハチミツなどの具材を乗せた8種類。[br] サイズは直径20センチ、値段は1枚500円(税込み)と食べやすく、最近は年配のリピーターも出てきた。ピザのほか、コーヒーやデザートも提供している。[br] 浅倉さんは、「お客さんにおいしいと言われたり、教え子が来てくれたりするとうれしい。いつかキッチンカーの営業も始め、山田町の人にもまた食べてもらえたら」とほほ笑む。[br] 店の住所は二戸市福岡八幡下59の3(章月ビル2階)。営業は午前11時~午後5時(ラストオーダーは同4時半)。定休日は火、金曜(9月以降は月末の日、月曜も休み)。問い合わせは同店=電話0195(30)1011=へ。