六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場で2006年に始まったアクティブ試験前なら、核燃料サイクルをやめる選択肢もあったが、国内でプルトニウムを生み出した以上、それは使っていかなければならない。ただ、国のサイクル一本やりの政策は破綻している。再処理工場は動かしつつ、(核燃料を再処理せずに処分する)ワンススルーの併用を模索すべきだ。[br] 日本のプルトニウム保有量は18年末時点で約46トン。消費方法は今、軽水炉で燃やすプルサーマルしかないが、導入している炉で再稼働したのは4基しかない。保有量を減らすために電気事業連合会が掲げた16~18基の目標は全く見通しが立っていない。[br] もう一つの使い道である高速炉について、国は開発目標を今世紀後半としたが、単に先送りにしただけのように思える。本当に実現しようとするなら、この10年で何をやるかを示さなければならない。[br] 切り札だった高速増殖原型炉「もんじゅ」を廃炉にした時点で、サイクルだけの路線は成り立たなくなった。これは原子力の賛否に関係なく、明らかなことではないか。[br] 他にプルトニウムを減らす方法がないわけではない。(建設中の)大間原発で採用する、プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を全炉心で使う「フルMOX」だ。全国の最新鋭の炉でフルMOXを導入すれば、少なくとも六ケ所の製造分は消費できる。[br] 危険性の最小化の観点で見た時、旧型より新型の原発の方が危険性は小さい。旧型のリプレース(建て替え)を進めつつ、フルMOXに切り替えるべきだ。[br] 再処理工場は建設費などが多額とされるが、再処理すれば廃棄物の容積は小さくなるため、最終処分場の費用削減につながる。工場を今から廃止しても費用はかかる。工場の要否の議論は06年の試験開始時に決着していると思う。[br] 原子力の最大のリスクは首相官邸にある。長く一強体制が続いてるのに、明確な政策を打ち出せないのはなぜか。[br] 例えば、安倍政権がリプレースを進めると言ったとしても、国会の過半数は取れる。だが、政権の目標は憲法改正で3分の2が必要だから、原子力のようにややこしい問題を先延ばしにしてきた。官邸が原子力をのたれ死にさせたというのが私の見解だ。