2020年産の米価下落が懸念されている。毎年、主食用米の需要が減退する中、新型コロナウイルスの影響で外食向けのコメが売れず、消費停滞に拍車を掛けた。青森県の主食用米の作付面積は、6月末現在で前年より減少する見込み。だが、新潟県など主産地の一部は前年並みで、国内全体の供給量は大幅に減少しない見通しだ。現在、青森県産米の在庫量は過去5年で最も多い状況で、県内の生産関係者は「供給過多と消費停滞のダブルパンチだ」と頭を抱える。[br] 現在、流通している19年産は、やや在庫が多い状況となっている。農林水産省が毎月発表している「米に関するマンスリーレポート」によると、うち県産米の民間在庫量は5月末時点で9万8800トン(前年同時期11%増)と過去5年で最多。19年産は豊作基調だったことや、外食の消費が落ち込んだことが要因となった。全国で見ても、177万トン(10%増)と同様の傾向だ。[br] 同省が17日発表した主食用米の作付け意向調査では、青森など22道府県が減らす意向を示したが、主産地の新潟、秋田を含む25都府県は前年並みとした。青森県が作付けを減らす理由について、県農産園芸課は「備蓄米への転換が増えたことが要因」と説明。備蓄米は増加し、飼料用米は減少する。[br] 主食用米から非主食用米への転換を促すため、全農県本部は価格が安定しやすい政府の備蓄米への切り替えを進め、前年より1600トン多い1万6千トンを落札。ここ数年は米価が高止まりしており、今後の急落を見据えて生産者への打撃を抑えようと、各農協と話し合って取り組んだ。[br] 飼料用米への転換について、県農産園芸課の近藤幹三課長は「飼料用米への作付け転換を県内の生産者に今からお願いすることは厳しい」と強調。20年産米が確実に安くなるかどうか判断できない上、全国で足並みをそろえて主食用米を一気に減産しないと効果が現れない―と打ち明ける。[br] 十和田市で稲作などを手掛ける農業法人「十和田アグリ」の竹ケ原直大代表は取材に対し、「外出自粛により外食の需要が低迷したことは大きい。このままだと明らかにコメが余る」と予測。「米価下落は覚悟している。(コメの販売を委託した生産者に農協が仮払いする)概算金も前年並みにはならないだろう」と厳しさをにじませた。