八戸市が市庁前に建設中の新美術館は、ハード整備が着々と進む一方、中心街の他の公共施設との差別化や分かりにくいコンセプトなど課題も多い。建設費は30億円以上と巨額な上、毎年、一定の維持管理費も発生する見通しで、市財政への負担も軽くはない。多くの市民にビジョンを理解してもらい、利用を促進することが不可欠となる。[br] 市は新美術館を核に市民参加型の「アートを通じた学び」や「アートのまちづくり」を掲げる。展示や調査・研究といった従来の美術館機能に加え、アーティストと美術館スタッフ、市民が一緒に考え、創作することを想定している。[br] 一方、市中心街には、似たような役割を持つ文化施設として「はっち」がある。芸術家や市民がアート作品を作る「アーティスト・イン・レジデンス」や市民団体が作品を発表、展示するスペースなどがあり、役割が重複しているとの見方もある。[br] 新美術館のコンセプトも複雑だ。アートを通じて、まちや人を“育て”、その経験で磨かれた感性を生かして地域課題の解決などに結びつける―というもので、一連の流れを農場に見立て、「アートファーム」という概念を提唱する。[br] ただ、市民からは「コンセプトが分かりにくい」、「はっちとの違いは何か」といった声も上がっており、今後、ワークショップやシンポジウムなどを通じて市民へのさらなる周知も必要となる。[br] 美術や芸術に興味がある人だけではなく、一般市民も関心を持ち続けていくような仕組みや情報発信が市には求められる。