旧十和田市立新渡戸記念館の廃館を巡り、土地と主な資料を有する新渡戸家が、建物を所有する市を相手に、耐震の再試験の実施などを求めた民事調停が8日、十和田簡裁で開かれ、両者が折り合わず、不成立に終わった。今後は市が建物の明け渡しを求める訴訟に踏み切る可能性がある。[br] 同館を巡っては、耐震強度不足を理由に、2015年に市が廃止条例を制定。同家側は撤回を求めて提訴したが、昨年12月、最高裁が上告を棄却した。一方、廃止が確定した後も、同家とボランティアは運営を続けており、市側が申し入れた建物の明け渡しに応じていない。[br] 調停は、一連の裁判で市の耐震診断への疑念が払拭されなかったとして、同家側が市に対し、耐震の再試験や建物の譲渡などを求めて申し立てた。 調停後、取材に応じた同家代理人の松澤陽明弁護士によると、市側は判決が確定したとして、再試験の実施を拒否。これを受け調停委員会は同家側に、次回期日までに再試験を前提としない解決案を考えるよう提示し、同家側が了承した。[br] 一方、市側の代理人弁護士は▽再試験をしない▽同館を取り壊す―の2点を前提にしない限り、調停を続行できないと回答。取り壊しが前提では合意が見込めないとの判断から、この日のうちに不成立となった。[br] 松澤弁護士は「相手弁護士に(明け渡し)訴訟をやるということか―と確認したら、そういう話だということだった。そうなれば受けるしかない」と話した。[br] 同席した新渡戸常憲氏は「残念だ。取り壊した上での話し合いは了承できない。記念館を守ることが使命だ」と強調した。[br] 小山田久市長は「今後については弁護士と相談するとともに、近く市議会全員協議会の場で報告したい」とのコメントを出した。