「負けない。」映画は“希望そのもの” フォーラム八戸支配人の晴山さん

多くの人が再び映画を楽しめる状況になることを信じて営業を続ける晴山努さん=6月中旬、八戸市
多くの人が再び映画を楽しめる状況になることを信じて営業を続ける晴山努さん=6月中旬、八戸市
新型コロナウイルスの影響で客足が遠のく映画館。八戸市内唯一の施設「フォーラム八戸」で支配人を務める晴山努さん(42)は、自身を育んでくれた映画の力を信じて苦境に立ち向かう。時に励まされ、癒やされ、人生に迷った時は道しるべにもなった。「映画は.....
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 新型コロナウイルスの影響で客足が遠のく映画館。八戸市内唯一の施設「フォーラム八戸」で支配人を務める晴山努さん(42)は、自身を育んでくれた映画の力を信じて苦境に立ち向かう。時に励まされ、癒やされ、人生に迷った時は道しるべにもなった。「映画は人の心に寄り添う希望そのもの」。館内が再び、ファンや家族連れらの笑顔でいっぱいになることを願い、今日もスクリーンに“希望の灯(ひ)”をともす。[br] 父親と一緒に映画館に行くのが好きだった。子どものころに見た海外のアクション映画やSF作品の興奮は、今も忘れられない。[br] 高校時代、進路に迷った際に道を示してくれたのも映画だった。日大芸術学部映画学科の監督コースに進み、作品づくりを学んだ。映画館でアルバイトをするなど映画漬けの日々を送った。[br] 卒業後も映画への情熱は消えず、フォーラム八戸のオープニングスタッフとなり、その1年半後には支配人に就任。監督や俳優を招いたトークイベントや名作の上映などを企画しながら映画の魅力を伝えてきた。[br] 勤めて17年になる今年、最大の危機が訪れた。新型コロナの影響で来館者は激減し、感染防止のため4月からは休館せざるを得ない状況に追い込まれた。[br] 青森県の緊急事態宣言が解除されたタイミングに合わせ、5月中旬に営業を再開。換気や消毒を徹底し、座席も前後左右を空ける予防対策を講じたが、客足は鈍く、市民が映画を楽しむ気持ちにまで戻っていないことを痛感した。「こんな状況で映画を上映してもいいのか」。自問自答を繰り返した。[br] 「待ってたよ」「やっぱり映画は映画館で見ないとさ」。答えはすぐそこにあった。待ちわびた映画ファンの声がすべてだった。楽しそうに感想を語ってくれる姿がうれしかった。[br] 米アカデミー賞監督の作品やドキュメンタリー映画の特集など、これまで実施してこなかった新たな企画を立ち上げた。「やれることはまだある」。映画館を守ることは、自分を人生の大半をささげた映画への恩返しでもある。[br] 最近、人生の節目で何度も見てきたお気に入りの「一本」について思い返した。野球を題材に夢や希望、家族との絆を描いた1960年代の米国を舞台にした「フィールド・オブ・ドリームス」。うれしいことや悲しいことがあった日に見て、共に人生を歩んできた。「そんな映画との出会いを多くの人に与えたい」。信じ続ける限り、きっと夢は終わらないはずだ。多くの人が再び映画を楽しめる状況になることを信じて営業を続ける晴山努さん=6月中旬、八戸市