【新型コロナ】水産加工「ヤイチ」の柳沢さん「今こそ地域のために」/鮫町テークアウトマップを制作

生まれ育った八戸市鮫町の飲食店を応援しようと、各店で実施するテークアウト用料理を紹介するグルメ地図を制作した柳沢光さん=5月下旬、八戸市
生まれ育った八戸市鮫町の飲食店を応援しようと、各店で実施するテークアウト用料理を紹介するグルメ地図を制作した柳沢光さん=5月下旬、八戸市
海を臨む八戸市鮫町の水産加工会社「ヤイチ」で働く柳沢光さん(34)は、この街で生まれ育ち、現在も暮らしの拠点を構える生粋の「鮫っ子」だ。新型コロナウイルスによる外出や営業の自粛で低迷する町内の飲食店を応援しようと、各店で実施するテークアウト.....
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 海を臨む八戸市鮫町の水産加工会社「ヤイチ」で働く柳沢光さん(34)は、この街で生まれ育ち、現在も暮らしの拠点を構える生粋の「鮫っ子」だ。新型コロナウイルスによる外出や営業の自粛で低迷する町内の飲食店を応援しようと、各店で実施するテークアウト用料理を紹介するグルメ地図を制作した。同じく古里が危機に陥った東日本大震災の際は札幌市で働いており、何もすることができなかったのがずっと心に引っかかっていた。「今こそ地域の役に立ちたい」。積年の思いが自身を突き動かす。[br] 小さいころから海に慣れ親しみ、近隣住民も親せきのように接してくれる鮫町の雰囲気が好きだったが、高校卒業後は地元を離れて札幌へ。料理について学び、レストランでコックを務めるなど腕を磨いた。[br] 移り住んで7年になろうとしたころ、震災による津波が古里を襲った。信じがたい映像に食い入る日々。恐怖しかなかった。それと同時に、遠くからは何もしてあげることができず、途方に暮れるしかなかった。[br] その後結婚し、子どもが生まれたことを機に地元へ戻る決断をした。いつもと変わらない様子で迎え入れてくれた古里。水産加工会社が集積する鮫町に漂う独特の香りも心地良かった。[br] 仕事ではこれまで培った技術を生かした新商品を手掛けてきたが、コロナ禍で状況は一変した。売れ行きは一気に落ち、町内もどんよりとした空気に包まれた。[br] ある日、ファストフード店に立ち寄り、フライドポテトを買った。自宅まで車で数十分の距離があるため、既にしんなりとしていた。その様子を眺めるうち、「鮫町にあるおいしい料理をあらためて見直したい」との思いがわき起こった。震災の時に無力だった自分にも思いをはせながら。[br] 持ち帰り料理を紹介するマップづくりに向け、居酒屋や食堂などからの理解を得るために奔走。会社の了承も取り付け、少しでも経費を抑えるために自身でデザインを手掛けた。その間、鮫町を代表するホテルの閉館や飲食店の休業など暗いニュースが次々と耳に入ったが、少しでもにぎわいを取り戻すため、ひたすら前へと突き進んだ。[br] 完成したマップは「さめまち持ち帰りグルメ地図」と名付け、7店舗の一押しメニューを紹介。好評を集めているようで、「今までできなかったことをようやく実現できた」と喜びをかみ締める。[br] これまで会社では、首都圏からの観光客らをターゲットにした土産品の開発に力を入れてきた。しかし、コロナ禍の中で始めた土産のセット商品を多くの近隣住民が買い、それを離れた家族へ配送してくれていたことを知った。[br] 「今までは遠くばかり見ていたが、支えてくれるのは地元の人たち。その恩返しになるといいな」。鮫町からは離れられそうにないようだ。生まれ育った八戸市鮫町の飲食店を応援しようと、各店で実施するテークアウト用料理を紹介するグルメ地図を制作した柳沢光さん=5月下旬、八戸市