【世界のJOMONへ】第3部 知られざる縄文の魅力(5)個性豊かな出土品

青森県内の縄文遺跡からは個性的な土偶や土器が数多く見つかっている(写真はコラージュ。左上から縄文美子、縄文くらら、階上町の出土品、鼻曲がり土面)
青森県内の縄文遺跡からは個性的な土偶や土器が数多く見つかっている(写真はコラージュ。左上から縄文美子、縄文くらら、階上町の出土品、鼻曲がり土面)
世界遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産は、青森県内で8遺跡あり、それらはいずれも国の史跡などに指定されている。しかし、県内では、構成資産以外の縄文遺跡からも個性的な土偶や土器が数多く見つかっている。これらは構成資産とし.....
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 世界遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産は、青森県内で8遺跡あり、それらはいずれも国の史跡などに指定されている。しかし、県内では、構成資産以外の縄文遺跡からも個性的な土偶や土器が数多く見つかっている。これらは構成資産として光は当たらないが、縄文全体の魅力、価値を押し上げる上で大きく貢献している。[br] 六ケ所村では、湖沼群の豊かな自然に抱かれ、現在のむつ小川原開発地域に縄文人が住んでいた。発掘調査は、大規模な開発事業に伴って1970年代から行われ、縄文時代草創期から晩期の遺跡が見つかった。中でも有名な出土品は、縄文時代晩期の上尾駮(かみおぶち)1遺跡から出土した土製のお面「鼻曲がり土面」だ。[br] 右に大きく曲がった鼻が特徴で、「まがりん」という愛称で同村立郷土館のイメージキャラクターにもなっている。[br] 同館の鈴木浩館長によると、土面は全国で約140点出土しているが、鼻が曲がっているものは5点ほどと大変珍しい。鈴木館長は、曲がった鼻について「眉毛を含め、まんじのような形をしていることから、太陽神を表現しているのではないか」と推測する。[br] また、村内の弥栄平いやさかたい遺跡からは、縄文時代の女性の骨が入った土器も見つかった。女性は18~19歳で、骨をもとに全身を復元し、現在は対話型ロボット「縄文美子よしこ」として同館に展示されている。[br] 野辺地町の遺跡の出土品も興味深い。有戸ありと鳥井平とりいたい4遺跡からは、約3500年前の縄文時代後期に作られたとされる「板状立脚土偶」が見つかった。板状土偶に脚が付いたような形で、脚の部分は自立できるように立体的に作られている。高さは約32センチと大型。2012年に国の重要文化財に指定され、「縄文くらら」の名で親しまれている。[br] 見つかったのは98年。体は割れて五つに分かれていたが、いずれも1カ所から出土。割れた土偶を覆い隠すように土器が3個置かれており、儀礼のようなものに使われていたと考えられている。[br] 縄文時代中期から後期の土偶は十字形で板状のものが多いが、晩期になると遮光器土偶のような立体的なものが主体となる。「縄文くらら」は、ちょうどその中間、土偶の転換期を表しているという。[br] 海や山など自然豊かな階上町では、90以上の遺跡が見つかった。土偶は28点も出土し、中でも、滝端たきはた遺跡から出てきた手のひらサイズの「膝を抱える土偶」は、頭部と胴体が別に作られており、首を胴体の上部にはめ込むという珍しい技法が用いられている。寺下遺跡から見つかった鹿の角で作られた腰飾りも全国で数少ない貴重な遺物だ。[br] ほかにも土器やアクセサリーなどたくさんの出土品が町歴史民俗資料収集館に保存されている。町教委の伊藤航主査は「国の史跡でなくとも、魅力的な出土品はたくさんある。縄文時代の珍しい土偶や石器などを見てロマンを感じてほしい」と強調する。青森県内の縄文遺跡からは個性的な土偶や土器が数多く見つかっている(写真はコラージュ。左上から縄文美子、縄文くらら、階上町の出土品、鼻曲がり土面)