【世界のJOMONへ】第3部 知られざる縄文の魅力(3)ロマン

イラストレーターのトヨカワチエさん。縄文人や土偶をあしらったグッズを制作している=5月、青森市
イラストレーターのトヨカワチエさん。縄文人や土偶をあしらったグッズを制作している=5月、青森市
「冷たい土の中で何千年も眠っていたのかと思うと、いとおしい」。青森市を拠点にデザイナー、イラストレーターとして活動するトヨカワチエ(本名・豊川茅(ちえ))さん(29)は、縄文に“はまった”一人だ。野辺地町から出土した土偶「縄文くらら」のグッ.....
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 「冷たい土の中で何千年も眠っていたのかと思うと、いとおしい」。青森市を拠点にデザイナー、イラストレーターとして活動するトヨカワチエ(本名・豊川茅(ちえ))さん(29)は、縄文に“はまった”一人だ。野辺地町から出土した土偶「縄文くらら」のグッズを同町立野辺地中学校の生徒と共同で制作したり、縄文人をあしらったTシャツをデザインしたり―。「どんな入り方でもいいので、縄文って面白いと思ってもらいたい」と語る。[br] 数え切れないほどある縄文時代の出土品の中で、トヨカワさんのお気に入りは土偶。同市内の仕事場には、全国各地の土偶を紹介する本や、自身が描いた縄文人のカラフルなイラストなどが並ぶ。[br] 縄文時代の人々が作った土偶や土器は、人間や動物の姿を変形して表現したものや幾何学的な文様を施したものが多い。「緻密な文様を付ける才能があるのに、なぜリアルな形を作らないのか。あえて簡略化しているところにセンスを感じる」と、デザイナーならではの目線で魅力を語る。[br] 土偶や土器を求めて、青森県内外の博物館や出土品の展示施設にも足を運ぶ。小学1年の時、三内丸山遺跡で体験した土偶作りを通し、縄文時代の人々の暮らしに興味を持った。博物館巡りが好きだった祖父母に連れられて展示施設に足を運び、自然と縄文文化に親しんでいったという。[br] 高校卒業後は、県内の服飾専門学校などを経てデザイナーとして働いていた。縄文と強いつながりを持つ転機となったのは、2018年にデザインを担当した冊子「あおもり縄文女子」。「縄文ヘアスタイル」「縄文風メイク術」などを紹介するポップな冊子で、この仕事がきっかけに、縄文に関わるデザインやイラストの依頼が増えたという。[br] トヨカワさんにとって縄文のロマンは「自分で好きに考えられること」。縄文時代に生きていた人はもういないので正解がない。例えば、土偶は祭祀さいしの道具だったと考えられているが「自分がものづくりをする時、誰かのために、平和のために、なんてことは考えない。実は深い意味はなかったんじゃないか」と解釈。キャラクターグッズやぬいぐるみなどと同じで「作ってみたら面白かった、あると癒やされる、くらいのものだったのでは」と推測する。[br] 県内の遺跡などで構成する「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産を目指しているが、トヨカワさんは「地元に面白い土偶があることも、世界遺産を目指していることすらも知らない人もいるのではないか」と危惧する。展示施設などを巡る中で、三内丸山遺跡(同市)など著名な遺跡がある一方、日の目を見ていない出土品や遺跡も多いことを痛感したという。[br] 独自にガイドブックやグッズを作り、眠っている遺跡や展示施設を多くの人に紹介するのが今の夢だ。「グッズやイラストを通して、“何これ、超かわいい”という見方で紹介していきたい」と展望を描く。イラストレーターのトヨカワチエさん。縄文人や土偶をあしらったグッズを制作している=5月、青森市