天鐘(5月27日)

♪就職が決まって髪を切ってきた時 もう若くないさと君に言い訳したね―。変革を掲げて社会に挑み、夢破れた青年の虚無感。学生運動の余韻が残る中、『「いちご白書」をもう一度』は空前の大ヒットに▼時代を映した名曲だが、歌詞が意外な反応を呼ぶ。「長髪.....
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 ♪就職が決まって髪を切ってきた時 もう若くないさと君に言い訳したね―。変革を掲げて社会に挑み、夢破れた青年の虚無感。学生運動の余韻が残る中、『「いちご白書」をもう一度』は空前の大ヒットに▼時代を映した名曲だが、歌詞が意外な反応を呼ぶ。「長髪のままで内定をもらえたの?」。就職活動がマニュアル化されて久しい。一様に黒いスーツに身を包む若者が戸惑うのも無理はない▼髪を短く整えたり、明るい色を黒に染め直したり。本音と建前を使い分けながら、学生は職業選択という人生の大きな岐路に立つ。売り手市場が続く、はずだった。状況を一変させたのは、やはりあの感染症▼大卒予定者の内定率に急ブレーキがかかった。例年に増して滑り出しが早く、春先までは過去最高の水準だった。コロナ禍が就活のピークを直撃。採用活動の「中断」が業績不振で「中止」となったケースも▼アベノミクスが吹き飛ぶ。青森県内でも破産や営業停止が顕在化してきた。経済の急激な冷え込みは日銀が初めて「悪化」と表現するほど。景気拡大の果実を得ないまま、いち早く崩れ落ちるのは常に地方である▼就活の停滞が続き、対面授業もままならず、バイト頼みの生活は限界。株価は反発しているが、三重苦にあえぐ学生の姿は“コロナ恐慌”の序章か。実体の見極めを誤るようでは、「新たな日常」の安定など望むべくもない。