天鐘(5月26日)

仏国の作家ピエール・ブールのSF小説を原作にした米国映画『猿の惑星』の大ヒットは52年も前になる。未来の地球では猿が人間を支配しているという衝撃的な内容だった▼宇宙船がトラブルで惑星に不時着。クルーは武装した猿が人間の群れを管理している地球.....
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 仏国の作家ピエール・ブールのSF小説を原作にした米国映画『猿の惑星』の大ヒットは52年も前になる。未来の地球では猿が人間を支配しているという衝撃的な内容だった▼宇宙船がトラブルで惑星に不時着。クルーは武装した猿が人間の群れを管理している地球とは逆転の世界に巻き込まれる。ラストの砂に半分埋もれた「自由の女神像」で、未来の地球である事に気付かされる▼米ソ冷戦に警鐘を鳴らした傑作だ。逆転は感染症が契機で人類は感染して絶滅の危機。一方、抗体を持つ猿は変異で言葉を使えるようになり人間を支配する。取り巻く環境が新型コロナウイルスと闘う今に重なる▼49日間に及ぶ緊急事態宣言が全面解除された。極力多くの人に出会って語らい、共感し合うことで営々築いてきた人類の進化や文明が、外出自粛や営業休止でいとも簡単に否定される価値観の逆転を体験した▼仕事だからと億劫(おっくう)だった人との接触も、「8割削減」の目標通り人付き合いを減らせば“絶触”になる。次第に言葉が不要になる。言葉を失えば不寛容と分断が進み、自分や自国の利益だけが大事になってしまう▼人類学者の山極寿一(やまぎわじゅいち)京都大学長は「人類と類人猿を分ける大きな違いは共感力。共感なき人間世界はあり得ない」と語る。自粛で分断され、自国第一主義に陥ればコロナの思う壺(つぼ)。一つの絆で連帯される事を最も恐れているようだ。