八戸みなと漁協が前身を含め半世紀近くにわたり手掛けた卸売事業から撤退することは、著しい水揚げの落ち込みを背景に“ハマ”が縮小均衡へと向かう流れが根底にある。市内では先月に中型イカ釣り船1隻が廃業を決めたばかり。深刻化する漁獲不振の波紋が生産、販売へと及び、水産業界の厳しさが改めて浮き彫りとなった。[br] 「生産者のための市場を」―。1973年に八戸漁連(当時)が卸売事業に参画した最大の理由だ。以来、協同組合と株式会社という、組織風土の異なる2者が漁船誘致などで互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら「水産・八戸」を盛り上げてきたことは間違いない。[br] 半面、1990年代以降は海外漁場からの締め出しや、流し網漁禁止などによる水揚げ減から2者とも赤字体質となり、関係者の間では市場統合論が何度も取りざたされてきた。特に、93年ごろと2001年ごろには、いずれも協議組織を立ち上げ数年がかりで一本化の方向を決めながら、土壇場で破談になった経緯がある。[br] 八戸港の卸売事業で漁協と八戸魚市場の割合はおおむね3対7と言われる。複数の関係者によると、漁協側から魚市場へ打診があったのは、わずか2カ月ほど前という。今回の岡沼明見組合長をはじめ関係者の意思決定の早さは、危機感の強さの現れとも言える。[br] 受け皿となる魚市場にとって、喫緊の課題は今夏の盛漁期の対応だろう。ピーク時は1日に大中型船40隻以上、小型船100隻以上という港内の往来を遅滞なく進めるため、万全の体制を整えなくてはならない。[br] 魚市場の川村嘉朗社長も「赤字同士が一緒になる」と先行きの厳しさを否定しない。稼働が極端に低迷し「赤字の垂れ流し」と批判されている荷さばき施設A棟や、来年オープン予定のD棟についても、改めて存在意義が問われることになるかもしれない。[br] 魚市場のある関係者は「今後は他県の漁港との競い合いになる」と話す。厳しい時期こそ結束力が問われるはずだ。水産業界が力を合わせて難局に挑んでほしい。