ホヤの「繊毛」止まる仕組み解明/弘大准教授ら

ホヤの息が止まる仕組みを解明した、弘前大の西野敦雄准教授(左)と城倉圭氏(西野准教授提供)
ホヤの息が止まる仕組みを解明した、弘前大の西野敦雄准教授(左)と城倉圭氏(西野准教授提供)
ホヤは驚くと息が止まる?―。エラに生えている毛「繊毛」を動かして海水を取り入れ、息をしているホヤ。弘前大農学生命科学部の西野敦雄准教授(46)らは、特定の神経伝達物質を噴射して刺激を与えることで、ホヤの繊毛の動きが止まる仕組みを解明した。成.....
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 ホヤは驚くと息が止まる?―。エラに生えている毛「繊毛」を動かして海水を取り入れ、息をしているホヤ。弘前大農学生命科学部の西野敦雄准教授(46)らは、特定の神経伝達物質を噴射して刺激を与えることで、ホヤの繊毛の動きが止まる仕組みを解明した。成果をまとめた論文は3月、英国の実験生物学雑誌に掲載された。繊毛は人間の腎臓や気管にも生えており、多くの生き物が有する。研究が進めば、医療や水産業の分野などへの応用が期待される。[br] 繊毛は目に見えない細かい毛。人間の体内に生えている繊毛は、ほこりなどの異物をのどに押し戻したり、腎臓でできた尿を流したりする働きをしている。動きが止まる現象は昔から知られていたが、そのメカニズムはこれまでどの生き物でも明らかにされていなかった。[br] 西野准教授は、同大の卒業生で筑波大下田臨海センター所属の城倉圭氏らと共に、体が小さく透明な「カタユウレイボヤ」を使用して実験を重ね、神経伝達物質「アセチルコリン」を吹きかけると繊毛の動きが止まることを発見。アセチルコリンを受け取る受容体の特定にも成功した。[br] 西野准教授によると、この受容体は人間が持つアセチルコリン受容体と類似。人間の場合、繊毛の異常が病気を引き起こすこともある。ホヤの繊毛が動いたり止まったりする仕組みを解明することは、人間の繊毛でも動きの解明や、繊毛に作用する薬の開発などにもつながる―と考える。[br] さらに、水産業の課題解決にも貢献しそうだ。県内で養殖が盛んなホタテは夏場の高温によるへい死が懸念され、対応が難しい場合が多い。ホタテもホヤと同じく繊毛を使って息をするため、繊毛の研究はホタテの「健康」を管理する上でも重要という。[br] ホヤは外見では人間とかけ離れているが、西野准教授は「ホヤは進化の過程の“のぞき窓”。ホヤを研究することで、人間など脊椎動物がどう進化したのか解き明かすことができる」と強調。今後はホヤの繊毛の動きについて、動く早さを変えるなどより細かい仕組みを研究する方針だ。ホヤの息が止まる仕組みを解明した、弘前大の西野敦雄准教授(左)と城倉圭氏(西野准教授提供)