天鐘(5月4日)

白樺(しらかば)、青空、南風…。千昌夫さんの『北国の春』は都会で暮らす人の望郷の念を歌う。変わらぬ自然、人々の温かさ。「良きふるさと」の見本のような歌が発売されたのは43年前である▼望郷ソングはいつの世にもあるが、親元を離れての暮らしが昭和.....
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 白樺(しらかば)、青空、南風…。千昌夫さんの『北国の春』は都会で暮らす人の望郷の念を歌う。変わらぬ自然、人々の温かさ。「良きふるさと」の見本のような歌が発売されたのは43年前である▼望郷ソングはいつの世にもあるが、親元を離れての暮らしが昭和だった筆者にとっては、やはりそのあたりがじんとくる。新幹線も携帯もない時代。帰る「ふるさと」は今よりずっと遠かった▼世の中がはるかに便利になっても故郷への思いは変わるまい。この連休、帰省を楽しみにしていた人も多かったに違いない。それがコロナの影響でかなわなくなった。1人で部屋にこもる毎日はつらかろう▼帰ってこられない人への支援がうれしい。新潟県燕市は帰省を自粛した地元出身の学生たちに特産のコシヒカリ5キロを送ったそうだ。ふるさとを忘れてくれるな、達者で暮らせ―の粋な計らい。わが故郷、最高―と、送られた方は涙である▼この企画、地元の多くが賛同し、段ボールの中には野菜や味噌、漬物まで入っていたという。聞くほどに、どこか「昭和」の趣だが、こんなときだからこそ、そっと差し伸べられる手が温かい▼そういえば『北国の春』でも、思いがけなく届く母親からの小包が泣かせる。そうだ、会えないならばこの手もある。今からでも遅くはない。箱をひとつ用意して。幸い、こちらも詰め込むものには困らない豊かなふるさとである。