天鐘(4月20日)

お椀のような塒(ねぐら)に卵が二つ。小さな鳥が舞い降りてきた。スズメに似ているが、頭部に冠羽がある。ヒバリだ。拙宅の庭は猫の額ほどで、手入れが行き届かず野趣満点。絶好の営巣ポイントだったらしい▼保護色だから枯れ草に同化している。抱卵する親鳥.....
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 お椀のような塒(ねぐら)に卵が二つ。小さな鳥が舞い降りてきた。スズメに似ているが、頭部に冠羽がある。ヒバリだ。拙宅の庭は猫の額ほどで、手入れが行き届かず野趣満点。絶好の営巣ポイントだったらしい▼保護色だから枯れ草に同化している。抱卵する親鳥を探すのは容易でない。頻繁に動く視線だけが鋭い。新たな命の誕生を待ちわびていたが…。突如として姿を消したのは、天敵のカラスのせいか。数年前の春の出来事である▼巣はないものの、さえずりは今年も晴れた日の目覚めを迎えてくれる。天空から降り注ぐ美声は「舞鳴き」。多様な音色を複雑に組み合わせる。個体差があり、それぞれが唯一無二の“演奏家”▼古典派を代表する作曲家のハイドンは「弦楽四重奏曲の父」。その第67番は「ひばり」として親しまれる。転がるようなバイオリンの装飾音が印象的。目を閉じれば穏やかな風景が浮かぶ▼「ピチクリ」「ピーチュル」といった鳴き声は、民話の世界になると「日一分(ひいちぶ)」「利取る」。お金を貸した太陽に向かって盛んに鳴き、返済を迫っているのだとか。まさに雲隠れするお天道さまも困り者だが、叫天子(きょうてんし)も相当な高利貸である▼この北国でも各地から桜の便りが届くようになった。寒の戻りと冷たい雨で足踏みしているが、春本番は近い。鳥が歌い、木々がきらめく。そんな季節の歩みが、今年は特にじんわりと身に染みる。