新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。世界保健機関(WHO)は世界的大流行を意味するパンデミック状態であることを認め、イタリアを中心に感染が拡大する欧州がその「中心地」になったと表明した。[br] イタリアは今月19日に死者数が中国を上回り世界最多となり、またスペインの死者数も22日、世界で3番目になった。[br] 「移動の自由」を掲げる欧州連合(EU)も、米国が欧州26カ国からの入国停止を発表してほどなく、非EU市民の不要不急の入域を30日間、原則禁止することを決めた。各国は非常事態の宣言、外出禁止令、美術館やレストランなどの閉鎖を決めて感染防止に必死だ。フランスのマクロン大統領は「私たちは(ウイルスとの)戦争状態にある」と繰り返し強調し、ドイツのメルケル首相も「第2次大戦以来最大の難局」だと訴えた。[br] 各国政府はじめ公的機関と市民との協力、連帯でパンデミック危機を乗り越えてほしい。[br] 欧州が直面する緊急課題は二つ、人命救助と経済の救援だ。[br] イタリアでは高齢者の比率の高さ、医療体制の不備、当局の初動の遅れが被害拡大を招いたと言われる。感染の集中する北部ロンバルディア州では、集中治療室での患者受け入れが追いつかず病院の廊下や手術室にまで簡易ベッドが並ぶ。人工呼吸器も不足し、緊縮財政で人員が削減された医師や看護師にも感染が広がるなど「医療崩壊」の危機に直面している。[br] コンテ首相は21日夜、「守らなければならないのは命だ」と強調し、生活に必須でない工場や事務所を閉鎖し、労働者に在宅勤務を4月3日まで義務付けると発表した。[br] 休業を余儀なくされる市民への経済支援も死活問題だ。注目されるのは英国で、スナク財務相は企業などの従業員の雇用を守るため、休業者に月2500ポンド(約32万円)を上限に賃金の80%を政府が肩代わりすると発表した。前例のない経済支援策だが、労働者の賃金支援の実現を期待したい。ロンドンのカーン市長は弱者救済の重要性を訴え、路上生活者(ホームレス)にホテルの部屋を無償で提供するため市内のホテルに約300室を確保した。その指導力と連帯意識を評価したい。[br] 外出禁止のイタリアでは市民らが自宅のバルコニーや窓辺で歌を歌うなどしてお互いを励ましあい、会員制交流サイト(SNS)を通じて医療現場で奮闘する医師や看護師らに感謝の気持ちと連帯を示した。難局に立ち向かう希望を与えてくれる。