天鐘(3月15日)

忘れられない卒業式がある。「ぜひ来てほしい」と校長。取材のカメラは持たずに三戸中学校へ足を運んだ。子どもだけでなく大人も感泣している。むせびが静寂に際立つ。喜びや悲しみとは別の想いがあふれた▼問題行動で揺れた学校。自ら「再建」という重い命題.....
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 忘れられない卒業式がある。「ぜひ来てほしい」と校長。取材のカメラは持たずに三戸中学校へ足を運んだ。子どもだけでなく大人も感泣している。むせびが静寂に際立つ。喜びや悲しみとは別の想いがあふれた▼問題行動で揺れた学校。自ら「再建」という重い命題を課した。教員の熱意に生徒が行動で応えた。保護者も支えた。新たな伝統の集大成となる卒業式に涙が止まらなかった。門出の春に18年前を思い出す▼「三戸は教育の町」。町民の自負の原点は明治期の「暇修(かしゅう)塾」、戦前戦後の「三戸塾」にさかのぼる。現代版は2012年創設の「三戸土曜塾」。いずれも教員、退職者らの善意による無償の特別授業だ▼高い教養と豊かな心を備えた人材の育成。その志は町内の小中一貫教育にも根付く。9年間を見通して課程を編成し、道徳を実践につなげる「立志科」を設定。学力定着、不登校減少、“中1ギャップ”の解消に成果を見る▼あの日、学びやを巣立った子どもたちは今や現役世代である。社会の荒波にもまれ、悪戦苦闘しているのだろうか。往時の経験が生かされているとすれば嬉しい。やはり教育は将来への投資である▼今週末の卒業式は新型肺炎の余波に巻き込まれた。生徒にとって最後の貴重な時間は奪われたが、胸に刻まれた思い出は消えない。その経験は自分を支える大きな財産。力いっぱい次の扉を開いてほしい。