【震災から9年】海岸防災林 植樹ほぼ完了 八戸-三沢32キロ

海岸防災林として植えられたクロマツ(手前)。長期的な生育管理が今後の課題だ=3月、おいらせ町
海岸防災林として植えられたクロマツ(手前)。長期的な生育管理が今後の課題だ=3月、おいらせ町
東日本大震災の津波による被害軽減に大きな役割を果たすとともに、塩害などで深刻なダメージを受けた海岸防災林。八戸市市川町から三沢市砂森まで約32キロに及ぶ海岸防災林の再生に向け、県が取り組むクロマツの苗木約76万本の植樹作業が、当初予定から1.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 東日本大震災の津波による被害軽減に大きな役割を果たすとともに、塩害などで深刻なダメージを受けた海岸防災林。八戸市市川町から三沢市砂森まで約32キロに及ぶ海岸防災林の再生に向け、県が取り組むクロマツの苗木約76万本の植樹作業が、当初予定から1年前倒しの3月下旬に完了する。苗木が十分な高さに成長するには20~30年程度かかる見込みで、今後は長期的な生育管理が必要となる。県は「苗木を守り育てる方向に力を入れていく」と新たなステージを見据える。[br] 震災発生時、八戸、三沢、おいらせ3市町の海岸へ津波が押し寄せ、大量の海水が防潮堤を越え、砂浜を浸食した。この時、クロマツの林が“最後の砦(とりで)”となり、海水の勢いを弱め、住宅街への浸水を抑えた。県林政課治山・林道グループの阿部尚文総括主幹は「津波を食い止め、人命を守ることができた」と振り返る。[br] 海岸防災林の歴史は深い。潮風や砂ぼこりの被害を防ごうと、戦前から三沢市など一部地域では地元市民らが塩害に強く、強風にも倒れないクロマツを植えてきた。先人の知恵が築いた海岸防災林は震災で機能し、重要性が改めて認識された。[br] しかし震災から1年、2年と経過するにつれ、クロマツの状態は急激に悪化していった。重度の塩害による「赤枯れ」を発症し、3市町の沿岸で計134ヘクタールが被害を受けた。[br] 海岸防災林の再生を目指し、県は上十三森林組合など関係団体と協力してクロマツの苗木を集め、植樹作業を13年度から本格的に開始した。総額約46億円に上る作業費用には復興予算を活用した。また、海岸防災林の役割を多くの人に理解してもらおうと、地元市民やボランティアらを集めて植樹イベントを開催した。[br] クロマツの苗木の植樹がほぼ終了し、今後は苗木の健全な育成への計画策定が課題となる。苗木の養分が周囲の雑草に奪われないようにするため、県は20年度から苗木周辺の下草処理に取り組む方針。[br] また、海岸利用客のマナー違反も懸念される。上北地域県民局地域農林水産部によると、県管理の海岸防災林では、たき火によるぼやの被害が17~19年度の3年間に3件発生した。[br] 阿部総括主幹は「早めに作業が完了してほっとしている」と安堵(あんど)の表情を浮かべながらも、「苗木がしっかりと育つよう、責任を持って守らなければいけない」と気を引き締めた。海岸防災林として植えられたクロマツ(手前)。長期的な生育管理が今後の課題だ=3月、おいらせ町