【震災9年】野田村の防潮堤かさ上げ完了へ 津波避難の重要性は変わらず

3月末に海抜14メートルへのかさ上げ工事を終える米田地区の防潮堤=6日、野田村
3月末に海抜14メートルへのかさ上げ工事を終える米田地区の防潮堤=6日、野田村
東日本大震災で北奥羽地方最大の被災地となった野田村で、岩手県が進めてきた防潮堤のかさ上げ工事が3月末に完了する。津波からまちを守る要となるハード事業の終結で、村の復興も一区切りを迎える。ただ、防潮堤は最大クラスの津波を想定した設計ではなく、.....
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 東日本大震災で北奥羽地方最大の被災地となった野田村で、岩手県が進めてきた防潮堤のかさ上げ工事が3月末に完了する。津波からまちを守る要となるハード事業の終結で、村の復興も一区切りを迎える。ただ、防潮堤は最大クラスの津波を想定した設計ではなく、襲来時には逃げることが前提。村は今後も防災教育に力を入れ、避難の重要性を伝え続ける方針だ。[br] 村の防潮堤は野田、前浜、米田の3地区で総延長計2640メートル。野田は新設、前浜と米田は震災前の海抜10~12メートルから14メートルにかさ上げした。野田と前浜は2018年度に工事を終え、米田が3月末に完了して高さがそろう。[br] 震災では津波の引き波によって防潮堤の倒壊が相次ぎ、前浜でも510メートルを残して失われた。そのため、県はかさ上げする際、構造を強化。防潮堤の内陸側の傾斜を長く緩やかにし、コンクリート舗装も厚くして津波に強い構造にした。事業費は水門も含めて3地区で約190億円。[br] 村は震災で最大18メートルの津波に襲われ、37人が犠牲になったほか、全世帯の3分の1に当たる住宅515棟が被害を受けた。[br] 防潮堤は、昭和三陸大津波(村で12メートル)など数十年~数百年周期で発生する津波を想定。村は防潮堤(第1堤防)で防げない最大クラスの津波に対し、高さのある三陸鉄道リアス線と国道45号(第2堤防)、十府ケ浦公園の盛り土(第3堤防)との3段構えで村中心部の減災を図る考えだ。[br] 同村では、もともと防潮堤と防潮林によって中心部から海が見えなかったため、かさ上げを巡って村内の反対は少なく、早期完成を望む声が強かった。[br] 小田祐士村長は「防潮堤がつながり、ようやく安心感が生まれる部分はある」と評価。一方、「あくまで津波の威力を弱め、逃げる時間を稼ぐためのもの。警報が鳴ったら逃げる―という意識は50年、100年先までつなげていかなければならない」と強調した。3月末に海抜14メートルへのかさ上げ工事を終える米田地区の防潮堤=6日、野田村