新型コロナウイルスの感染拡大の影響が、青森県内の経済活動でも顕在化してきた。宿泊業では売り上げが落ち込み、宴会のキャンセルなどが発生。外国人旅行客の伸びが期待された観光業は、国際線の運休などで苦境に立たされている。[br] 県が2月中旬、商工団体を通じて新型ウイルスの影響を緊急調査した結果、直近1カ月の売り上げについて、全体106社の4分の1に当たる28社が前年同期比で減少したと回答した。[br] 県内の宿泊業13社に動向を聞いたところ、12社で平均35%の宿泊キャンセルが発生していると判明した。青森空港は韓国や台湾の国際線が運休。青森港に4月に寄港する予定だったクルーズ船5隻は欠航が決まり、乗船客がバスやタクシーで県内を巡る観光消費もなくなった。[br] 感染症で経済に大きな打撃を受けた中国は県内企業の主要な輸出先だ。2018年の貿易統計では輸出額がトップの432億円。機械・電気機器、金属品、ホタテが上位品目で、その影響は県内の製造業や1次産業にも及ぶ可能性がある。[br] 政府の方針を踏まえ、県内はイベントや集会の中止が相次いでいる。学校は長期の臨時休校措置が講じられた。消費増税による消費者心理の冷え込みが重なれば、小売業にとっても懸念材料となりかねない。[br] 有効な対処法が確立されていない感染症の拡大に、政府の対策も手探り状態だ。先の見えない不安をぬぐえない中、それぞれの企業は危機管理への対応力が問われる。[br] 県内企業の多くは9年前の東日本大震災を乗り越えた経験がある。津波や停電などの被害が重なった震災と、目に見えない微小なウイルスでは脅威の質が異なるが、教訓を生かせる部分もあろう。[br] 感染拡大は訪日外国人旅行客だけでなく、国内旅行者の動向にも影響する。観光関係の事業者は観光地への呼び込みもできず、苦しい立場にある。感染の終息後を見据えて力を蓄えることはできないか。[br] 人口減少や労働力不足に直面している地方。規模の小さい企業の割合が高く、経営体力が問われる場面も想定される。県は特別保証融資制度の活用を呼び掛けているほか、金融機関は相談窓口を設置している。[br] 経済活動の正常化には感染拡大を防ぐことが第一だ。目の前の事態を乗り越えるため、企業は情報を収集して変化に対処したい。県や商工団体は国への要望も含め、連携して地域の実態に即した対策を講じてほしい。