【超高齢社会の先へ】第2部 介護現場のリアル(4)

在宅で療養する患者の診療を行う小倉和也医師(右)。患者や家族との会話も訪問診療でで欠かせない=2月4日、八戸市内
在宅で療養する患者の診療を行う小倉和也医師(右)。患者や家族との会話も訪問診療でで欠かせない=2月4日、八戸市内
高齢者や障害者ら通院が困難な患者の自宅や施設に医師が訪問して診療を行う在宅医療。高齢化により介護需要が高まるのに伴い、ますます役割が重要になる。一方で、訪問診療をする医師は少数で、医師確保とともに総合病院との連携強化が求められる。在宅医療の.....
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 高齢者や障害者ら通院が困難な患者の自宅や施設に医師が訪問して診療を行う在宅医療。高齢化により介護需要が高まるのに伴い、ますます役割が重要になる。一方で、訪問診療をする医師は少数で、医師確保とともに総合病院との連携強化が求められる。在宅医療の現状を探るため、60人以上の在宅患者を診療する「はちのへファミリークリニック」の小倉和也院長の訪問診療に同行した。[br]   ◇   ◇[br] 八戸市内の自宅で糖尿病の療養を続ける妹(66)と暮らす山崎進さん(70)=仮名=は、仕事をしながら妹の看病を続けている。昨年11月に妹が救急車で搬送された。退院後は自宅で療養生活を送り、現在は月に1回のペースで訪問診療を受けている。[br] 小倉院長は診察に加え、日頃の歩行訓練などリハビリの様子も入念にチェックしていく。本人や家族の話に耳を傾け、ささいな変化や療養生活への不安を見逃さないように気を配る。[br] 「妹を通院させるのは難しい。妹の体への負担も心配だしね」と山崎さん。利用前まで在宅医療について知る機会がなかった。「もっと在宅医療が当たり前になり、妹のような患者をみんなで支えられるような地域になれば」と願う。[br]   ◇   ◇[br] 八戸市内の有料老人ホームに入所する義母(84)に寄り添う原田真琴さん(64)=仮名=は「義母は高齢で通院するにしても動くのが大変。訪問診療は本当に助かる」と実感する。[br] 歌が得意な義母は、毎回、往診の時に歌を披露することにしている。次回の往診までに練習をしているといい、小倉院長の前で歌声を響かせる義母の表情はどこか晴れやかだ。[br] 家族のことや思い出話をするのもいつもの決まり。会話を通して健康状態を確認し、看護師や介護士らと情報を共有する大切な時間になっている。原田さんは「小倉先生が訪問する時間は義母にとって張り合いになっている」と喜ぶ。[br]   ◇   ◇[br] 在宅医療と聞くと、「みとり」や「現状維持」といったイメージが先行してしまいがちだが、住み慣れた場所で生活を続けながら「外出できるようになりたい」「自分で食事を取れるようになりたい」など、本人が希望する生活に向けて積極的に回復を目指すことに大きな目的がある。[br] 単に診察や薬の処方だけでなく、会話を通して生活状況の確認や、看護師や介護職員と情報を共有することに重点を置き、多職種で連携して診療を進める。[br] 在宅医療は決して「最終的な医療」ではない。小倉院長は「高齢の方でも在宅から通院に切り替え、在宅医療を“卒業”する人もいる。患者の生活を支えるための医療」と説明する。[br] ただ、在宅医療を行う医師は徐々に増えてきてはいるが、まだ十分な数ではない。小倉院長は、難病や小児など特殊医療に対応できる医師の確保も課題に挙げる。さらに、救急医療の現場では軽症の受診者が多いのも懸案の一つだといい、小倉院長は「在宅医療が普及することで救急現場の負担を減らし、必要な人に必要な医療を提供することができる。これからは総合病院と在宅の現場との連携が重要になる」と強調する。在宅で療養する患者の診療を行う小倉和也医師(右)。患者や家族との会話も訪問診療でで欠かせない=2月4日、八戸市内