十和田市生まれの作家高橋弘希さん(40)=千葉県在住=の第159回芥川賞受賞作「送り火」(文芸春秋)が、相次いで外国語に翻訳されている。昨年5月には韓国語版が刊行。今年10月にフランス語版の出版が予定されているほか、中国語繁体字(はんたいじ)版も翻訳が進められている。自身の作品が海を渡ることに、高橋さんは「あまり実感はない」としつつも、「気楽に読んでほしい」と話している。[br] 同作は、東京から津軽地方に引っ越してきた男子中学生を主人公に、遊びと暴力の境がない少年たちの集団心理から生まれる残酷さを描いた。高橋さんの父親の出身地・黒石市の「大川原の火流し」を思わせる伝統行事が、印象的に描写されている。[br] 文芸春秋によると、翻訳作品を手掛ける海外の出版社も日本の文学賞をチェックしており、芥川賞受賞をきっかけに翻訳を検討したいとの打診があった。台湾の出版社による繁体字版は台湾、香港、マカオに流通する予定。[br] フランス語版はエージェントのフランス著作権事務所の社長が作品にほれ込み、熱心に出版社に紹介した結果、村上春樹さんの作品を出しているBelfond(ベルフォンド)が名乗りを上げた。10月の刊行を目指して翻訳編集中だという。[br] 韓国語版の版元Hainaim Publishing Co.,Ltd.では、文章力と作品性を称賛する評論家の評に後押しされ、翻訳化を企画。同社は「読者からは『思春期の弱肉強食を通し、人間の暗い深淵を味わった』との感想が多い」としている。