よみがえれ秘伝の酒「國光 正宗」 古来の醸造製法見つかる

見つかった“秘伝書”を見る布施かおりさん(中央)らプロジェクトメンバーと歴史史料の専門家=6日、洋野町大野の西大野商店
見つかった“秘伝書”を見る布施かおりさん(中央)らプロジェクトメンバーと歴史史料の専門家=6日、洋野町大野の西大野商店
創業242年の洋野町大野の「西大野商店」が、江戸後期から昭和初期にかけて醸造、販売していたとされる日本酒「國光 正宗」。古来の製法を伝える“秘伝書”が社内で見つかり、同社の晴山弘則会長の長女布施かおりさん(56)を中心とする有志メンバーが、.....
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 創業242年の洋野町大野の「西大野商店」が、江戸後期から昭和初期にかけて醸造、販売していたとされる日本酒「國光 正宗」。古来の製法を伝える“秘伝書”が社内で見つかり、同社の晴山弘則会長の長女布施かおりさん(56)を中心とする有志メンバーが、当時の酒造りの再現を試みる「南部藩・復活酒プロジェクト」を始動させる。二戸市の酒造会社「南部美人」などが協力し、今春から酒米作りに入り、2021年春の商品化を目指す。布施さんは「歴史に思いをはせ、酒造りで地域を盛り上げるきっかけにしたい」と意気込む。[br] 同社は八戸藩政時代、初代晴山吉三郎が各種事業に優れた才覚を発揮したことに端を発する。以来「晴山家」が代々受け継ぎ、鉄産業、製塩、酒やみそ、しょうゆの醸造、小売業など、時代に合わせた多角的な商売を展開し、地域経済の中心として根付いてきた。[br] 酒造りは、江戸後期に店の敷地内に建設された酒蔵で、戦争による国の食料統制などの影響で廃業する1942年まで行われた。「正宗」は主要品種の一つで、明治時代の国の品評会で賞にも輝いたという。[br] 今回見つかったのは「醸造」「秘伝」という記述がある、大正期に書かれたとみられる書物。江戸時代からの伝統的な製法で、米や水の分量、仕込み方などが記されている。[br] 布施さんが昨年、歴史のある酒蔵の保存や活用、当時の酒造りを復活する方法を模索していたところ、社内で保管していた史料の中から「秘伝のレシピ」を偶然発見。醸造法は一般的に杜氏が口伝えで継承することから、書物として残っていることが珍しく、「見つけた時は鳥肌が立った」と振り返る。[br] 同社に関する江戸時代からの史料は東北大(仙台市)に保存されているが、今回の分は1955年に蔵の一つが火事になった際、従業員が避難させて社内で保管していたものの一部だったという。[br] 布施さんはその後、南部美人の久慈浩介社長や、無農薬の自然栽培で酒米作りに協力する十和田市の農家ら5人とともにプロジェクトを立ち上げた。久慈社長によると、史料に沿って酒造りをする場合、現在とは仕込み配合や酒母を手作業で造る「生(き)もと」である点、木だるを使うことなどが異なるという。[br] プロジェクト1年目は、なるべく江戸時代の方法に近づけ、東北地方に昔から存在する酒米を使う予定。2年目以降はさらに原材料などの研究を重ねる。販売方法や場所については今後検討する。[br] 布施さんは、十和田市内で予定する田植え体験を兼ねた酒米作りなどで地域住民らが関わる機会を創出したい考え。布施さんは「地域で親しまれていた酒の復活を通じ、歴史を身近に感じてもらう機会にしたい」と話す。見つかった“秘伝書”を見る布施かおりさん(中央)らプロジェクトメンバーと歴史史料の専門家=6日、洋野町大野の西大野商店