「えんぶり」本格調査に着手 歴史や特徴を掘り起こしへ

八太郎えんぶり組保存会の総練習。各組で本格的なえんぶり調査が進められている=12日、八戸市の八太郎生活館
八太郎えんぶり組保存会の総練習。各組で本格的なえんぶり調査が進められている=12日、八戸市の八太郎生活館
八戸えんぶりの開幕が17日に迫る中、八戸市教委などが民俗芸能「えんぶり」の本格調査を進めている。えんぶりにスポットを当てた大規模な実態把握調査は初めてで、2019年度から22年度までの4カ年にわたる一大事業だ。現存する45のえんぶり組を対象.....
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 八戸えんぶりの開幕が17日に迫る中、八戸市教委などが民俗芸能「えんぶり」の本格調査を進めている。えんぶりにスポットを当てた大規模な実態把握調査は初めてで、2019年度から22年度までの4カ年にわたる一大事業だ。現存する45のえんぶり組を対象に調べ、八戸地方に春を呼び込む伝統行事の歴史や各組の特色などを詳細に掘り起こす。12日には、江戸時代から続くとされる「八太郎えんぶり組保存会」に調査員が入り、練習の様子を“徹底取材”した。えんぶり組の関係者は「自分たちのルーツを探る機会になれば」と期待を込める。[br] 調査の事業主体は八戸、南部、階上、おいらせの4市町で、文化庁の補助事業として実施。八戸圏域や岩手県北地方で現存する45組を対象に19年度は13組、20年度は15組、21年度は17組と3カ年に分けて調べる。最終の22年度は報告書を作成、刊行する計画だ。[br] 調査を担うのは民俗文化財担当の学芸員らで、東北地方各地から集結。それぞれが各えんぶり組の専属となり、延べ7~10日間ほどを掛けて精査する。調査項目は各組の活動遍歴や特有の行事、練習の方法など。太夫の摺(す)り、祝福芸、お囃子(はやし)の特徴なども調べ上げ、撮影しながら記録に残す。[br] 事務局を務める八戸市教委社会教育課の小林力主事兼学芸員は「組ごとに歴史や舞はさまざま。多様性がえんぶりの特色の一つでもある」と指摘。「調査は各組との共同作業で、新たに気付くこともあるはず。将来の伝承にもつながってほしい」と意義を示す。[br] 12日夜には、八太郎えんぶり組保存会の活動拠点である八戸市の八太郎生活館に、調査員の熊谷隆次さん(八戸工大二高教諭)と岩舘岳さん(岩手県紫波町教委生涯学習課主任)の2人が訪問。大人から小さな子どもまで50人以上が集まった「総練習」の様子を調査し、写真や動画で撮影しながら、世代交代が進む組の活動状況を記録した。[br] 今回の本格調査には、えんぶり組の関係者も大きな期待を寄せている。同保存会一番親方の杉本昇一さん(50)は「今年は調査も踏まえて世代交代が進んだ。組の歴史を知り、これまでの伝統を引き継いでいきたい」、代表の渡辺茂さん(64)は「昔の記録はあまり残っておらず、組のルーツなどを探るきっかけになればいい」と語った。[br] えんぶり調査を巡り、市教委は18年度に予備調査を実施した。それによると、苗を取る所作を舞う「苗取り組」を含めたえんぶり組は、北はむつ市から南は岩手県葛巻町周辺まで存在していたことが判明。一方、時代の変化の中で、約160組が休止・廃止状態となっている実態も判明した。八太郎えんぶり組保存会の総練習。各組で本格的なえんぶり調査が進められている=12日、八戸市の八太郎生活館